民藝に日本画、現代美術…個性的な建築やアートに心奪われる、京都での美的体験をここで。
口コミであがったアートスポットを紹介します。
撮影・仲尾知泰 構成&文・矢吹紘子
| 清水五条 |河井寬次郎(かわいかんじろう)記念館
「みんげい おくむら」主人・奥村忍さん、ライフスタイルコーディネーター、 パフューマー・山藤陽子さんオススメ
趣のある日本家屋でもの作りの真髄に触れる。
大正から昭和にかけて活動した陶芸家で、民藝運動の中心人物でもあった河井寛次郎。
ここ河井寛次郎記念館は、氏のかつての住まいである木造建築の邸宅を公開したミュージアムだ。
様々な陶芸作品に加え、どことなくユーモラスな木彫り作品、木の温もり溢れる家具。
それらが日常生活に溶け込むようにさりげなく飾られた姿は、まさに〝用の美〞の精神そのもの。まるで知人の家に招かれたような気分で、力強い手仕事の軌跡を辿り、体感することができる。
●京都市東山区五条坂鐘鋳町569
TEL.075・561・3585 10時~17時(入館は閉館の30分前まで) 月曜休(祝日の場合は翌火曜休)、夏季・冬季休館あり 大人900円 年に4回展示替えあり。
| 岡崎 | 京都市京セラ美術館
「くるみの木」主宰・石村由起子さん、山藤さんオススメ
古典から現代美術まで。建築好きも必見!
2020年春にリニューアルした京都市京セラ美術館は、1928年に挙行された即位の大礼を記念して建設が始まり、1933年に完成。
建築家・前田健二郎による帝冠様式の威風堂々たる建物の魅力はもちろん、新たに増設され、話題の企画展を連発している現代アートの展示スペース「東山キューブ」や、日本有数の作庭家が関わった日本庭園、気さくな雰囲気のカフェ『ENFUSE(エンフューズ)』など見どころが尽きない。帰り際にはお土産チェックもお忘れなく。
展示情報
美術館には近代以降の京都の美術作品約4000点を所蔵している。開館90周年を迎える2023年秋には日本画界の重鎮、竹内栖鳳(たけうちせいほう)の展覧会を開催予定。
東山キューブでは6月4日までデザイナーやアーティスト、工芸職人なども参加する『[特別展]跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー』を開催中。
●京都市左京区岡崎円勝寺町124
TEL.075・771・4334 10時〜18時(入館は閉館の30分前まで) 月曜休(祝日の場合開館) コレクションルーム一般730円(京都市内在住者520円) 企画展は別料金。
| 衣笠 |京都府立堂本印象(どうもといんしょう)美術館
石村さんオススメ
建物自体が作品! 精緻な美の世界に浸る。
壁一面に表現されたダイナミックかつ繊細なレリーフに、まず圧倒される。おとぎ話の家のような佇まいの堂本印象美術館は、20世紀初頭から半ばにかけ活動した芸術家・堂本印象が自ら設計デザインも手がけた、いわば彼の集大成。その美意識は扉の取っ手からフロアの表示まで、隅々に反映されている。仏教美術の影響が色濃い初期の作品や、渡欧を経て確立した抽象表現の絵画など、展示物も含め、まさに唯一無二。
展示情報
3月26日までコレクション展『音のハーモニー ―印象が奏でる風景―』を開催中。大正期に描かれた小唄絵や、昭和時代初期の宗教画、戦後の代表的な抽象画《交響》など、堂本印象の収蔵品の中でも音楽へのインスピレーション溢れるピースが並ぶ。
●京都市北区平野上柳町26・3
TEL.075・463・0007 9時30分〜17時(入館は閉館の30分前まで) 月曜休(祝日の場合は翌火曜休) 一般510円
| 岡崎 |細見美術館
セレクトショップHAURA経営・山口れいこさんオススメ
琳派から若冲まで。江戸絵画ならここへ。
毛織物で財を成した実業家・細見良のコレクションに端を発する美術館。現館長の細見良行さんは孫にあたり、神道・仏教美術、茶の湯の美術など、受け継がれた貴重な作品を選りすぐって展示する。
なかでもほぼ全ての作家を網羅する琳派の作品や、京都ゆかりの画家・伊藤若冲のコレクションは一見の価値あり。地階に若冲モチーフのスイーツがいただけるカフェ、最上階には東山を見渡す茶室も。
展示情報
5月31日まで特別展『香道 志野流の道統』を開催中。室町時代後期に誕生した"香道"の家元、志野流にフォーカスし、初代志野宗信から現家元20代幽光斎宗玄まで、500年にわたる歴史を紹介する。香図本や文献、蘭奢待(らんじゃたい)など貴重な名香も展示。
●京都市左京区岡崎最勝寺町6・3
TEL.075・752・5555 10時〜17時(入館は閉館の30分前まで)
月曜(祝日の場合翌火曜休)・展示入替期間休
入館料は展覧会により異なる 京都市京セラ美術館または京都国立近代美術館の観覧券提示で割引あり。
| 祇園 |何必館(かひつかん)・京都現代美術館
料理研究家・井原裕子さん、山口さんオススメ
まるで空中庭園! 祇園の隠れた美術館。
村上華岳や山口薫、日本美術史に名を残す画家たちと、北大路魯山人の作品を柱として1981年に開館。
近年は国内外の写真家の企画展を精力的に開催するなど、ジャンルを超えたエキシビションで魅了する。
ここでは苔庭と茶室を擁する最上階を必ず訪れたい。丸い天窓から差し込む日差しと、控えめにそびえ立つ紅葉の木の美しさ。それらを目の前に眺めるソファ席は、隠れファンも多い穴場アートスポットなのだ。
●京都市東山区祇園町北側271
TEL.075・525・1311 10時〜18時(入館は閉館の30分前まで)
月曜・展示入替期間休 一般1,000円
『クロワッサン』1089号より