東京・日本橋の街を、大久保信子さんが歩いていく。
江戸の昔から布の商いの中心だったこの街の、木綿問屋の生まれ。放課後に歌舞伎座に寄って、一幕観て帰っていたという江戸っ子だ。着物スタイリストの草分けであり、今も第一線を走り続けている。
「毎日とても楽しいわよ」と微笑んだ。
「撮影の現場も、着付けや着こなしをお教えする講座も、それから着物のデザインも。週に一度、日本舞踊のお稽古に行って、1時間ほど踊るのが健康法かしらね。
食べ物の好き嫌いもないし、何でもおいしく、残さず頂いています。戦争が終わった時、私は小学生。あの頃は本当に食べるものがなくて、好き嫌いなんて言ってられない。しかも私、5人きょうだいの真ん中なの」