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専門家に聞く、ペットを災害から守るためのふだんのしつけや住まいの準備とは?

必要なしつけに防災用品など、いざというときペットの健康と命を守る、心構えと対策を紹介します。

イラストレーション・小林マキ 文・長谷川未緒

「東日本大震災以降、ペットと防災について理解が進んできましたが、最近は地震だけでなく豪雨被害も切実な問題になり、災害による被害と対策の違いを理解することが必要です」

と語るのは、多くの災害現場で動物救援を行ってきたNPO法人「アナイス」の代表を務める平井潤子さんだ。

「ハザードマップを確認しておけば、自宅付近の被害が想定できます。豪雨の予報で避難の必要があるならば、一時避難所はペット不可になることも多いため、ペット可のホテルに宿泊するなど、ひと晩をしのぐ方法を考えましょう」

地震の場合、家屋の倒壊や火災があって指定避難所に行った後、避難生活が長引く恐れも。大規模地震では支援を期待せず、自助で備える努力を。

「いざというときに頼れる飼い主仲間や友人も、被害を乗り越える助けになります。防災において画一的な答えはありません。さまざまなパターンを想定し、臨機応変に行動できるよう“飼い主力”を鍛えましょう」

Q.高齢だったり病気があったり、避難が難しそうなペットの備えは?

A.在宅避難も選択肢に。事前に動物病院に預けても。

慣れない避難所での生活は、人にもペットにも大きなストレスがかかる。避難所に行かずに生活を続ける「在宅避難」ができるように準備を整えましょう。

食料の備蓄やライフラインが止まったときへの備えなど、防災の基本は万全に。また居住可能なことが大前提ですから、耐震性や耐火性の不安を解消し、浸水時に備えてペットの居住空間を2階にしておくのもおすすめ。

集中豪雨の予報で事前に避難する可能性が高いとわかっている場合には、早めに安全な場所にある動物病院に預けてしまうのも手。投薬などの治療も行ってくれますし、避難所と比べればペットへの負担も少なくてすみます。

Q.ペットの命を守るために今すぐできる、具体的な住まいの工夫を教えて。

A.いつでも逃げ込める、生存空間を確保して。

災害が起きたときに飼い主が不在でも犬や猫が生き延びる可能性を高めるため、飲み水は家のあちこちに用意して、いつでも飲めるようにしておくといいでしょう。飼い主が何日か帰れなくても、水さえ飲めれば助かる確率が高まります。

また、家屋が倒壊しても柱や家具などが支えになって守られる見込みのある生存空間の確保も大切です。キャリーやハウスなどをそうした空間に置いておき、ふだんからその場所に慣らしておくことをおすすめします。

水害の多い地域ならば高い場所に逃げられるようにしておくなど、住まいや環境によってケースバイケースで考え、工夫することが肝心です。

押し入れやトイレなど、柱が多くて倒壊しにくい、安全な場所を確保して。
押し入れやトイレなど、柱が多くて倒壊しにくい、安全な場所を確保して。

Q.迷子対策はマイクロチップを埋め込んでいれば、万全?

A.どんな状況でも見つけだすために、できうる限りのことをして。

マイクロチップは動物の体に埋め込む電子迷子札のようなもの。専用のリーダーで番号を読み取り、登録機関のデータベースに照会すれば飼い主がわかる仕組みです。
体から外れる心配がないものの、停電が復旧するまで機能しないので、マイクロチップに加え、迷子札と畜犬登録票も装着しておくといいでしょう。

利用者同士で情報を共有したり、拡散したりできる迷子掲示板機能のあるSNSアプリの利用もおすすめ。また、迷子になったときの探し方を事前に調べておくことも大切です。

命綱は何本あっても困らないので、考えられる全ての備えをしておきましょう。

迷子ポスターも非常時には作れない。平時に作っておき、防災グッズに加えて。
迷子ポスターも非常時には作れない。平時に作っておき、防災グッズに加えて。

Q.もしものとき、周りに迷惑をかけないためのしつけとは?

A.社会性を身につけたフレンドリーな子に。

猫をしつけるのは難しいのですが、犬は日常生活の中でも、待てやおすわり、トイレトレーニングといった基本的なしつけをしている人が多いのではないでしょうか。

災害時には知らない人や生き物に囲まれたり、聞いたことがない音がしたりと、ストレスが多い環境になります。そういうときに吠え続けたり、威嚇したりすることなく落ち着いていられるよう、社会化トレーニングをしておくことが必要です。

散歩のときにほかの犬とあいさつさせる、子どもの声や自動車、バスなどの音に慣れさせるなど、さまざまな経験をしておくといいでしょう。いつでもどこでもできるだけ機嫌よくいられるよう、日常生活で心がけて。

散歩は社会性を身につける格好のチャンス。しつけ教室に通わせても。
散歩は社会性を身につける格好のチャンス。しつけ教室に通わせても。

災害に備えて用意しておくもの

□ フード、おやつ、水、食器
□ ペットシーツ、猫砂
□ 常備薬や治療薬、療法食
□ 繋留用リード、首輪
□ ドライシャンプー、ウエットタオル

ふだんからキャリーバッグに慣れさせておこう。
ふだんからキャリーバッグに慣れさせておこう。
広げられるリュック型キャリーバッグ。リオニマルGRAMP 4万9500円(ドリーム TEL.0120・559・553)
広げられるリュック型キャリーバッグ。リオニマルGRAMP 4万9500円(ドリーム TEL.0120・559・553)

もしもの場合に備えておきたい愛犬・愛猫用の防災グッズ。
フードやおやつは、食べたら買い足すローリングストックで最低でもひと月分以上は備蓄を。特にフードへのこだわりが強い猫や、病気を患っていて療法食を食べている場合は多めに用意しておくようにしてください。
自宅点滴で輸液などを冷蔵保存している場合は停電時の対策も忘れずに。キャンプ用品などもいざというときには活用できますし、必要なものはそれぞれ違うはずですから、自分でシミュレーションして把握しましょう。

  • 平井潤子

    平井潤子 さん (ひらい・じゅんこ)

    NPO法人「アナイス」代表

    公益社団法人東京都獣医師会事務局長。環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」編集委員。三宅島噴火災害、東日本大震災などでの活動を経て、現在に至る。

『クロワッサン』1056号より

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