香りで、色で、手触りで。もっと知りたいハーブのチカラ。
心地よい毎日のために、もっと暮らしに取り入れてみませんか?
撮影・徳永 彩 文・黒澤 彩
植物の気配を、いつも暮らしのそばに。触れることで心を温められる。
本誌連載「花に、託して。」でおなじみのフラワースタイリスト・平井かずみさんは、以前にも増してハーブに夢中だといいます。ハーブのことをもっと知るべく、早春の一日、長野県茅野市に「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」の萩尾エリ子さんを訪ねました。
平井かずみさん(以下、平井) 庭に春の小さな花々が咲き始めていますね。前回、こちらに伺ったときは初夏だったので、また違った景色を見ることができてうれしいです。
萩尾エリ子さん(以下、萩尾) 小さな花だけど、こうして花束にするといい匂いでしょう? 小瓶に入れて、瓶ごと差し上げるととても喜ばれます。
平井 本当にいい香り。疲れていたり体調が悪いときはたくさんの花を一から生けるのも大変だから、そのまま飾れる小さな花束ってすごくいい贈りものだと思います。この花束は、季節の処方箋みたいなものですね。
萩尾 それ、いい言葉ね。
平井 こんな時世なので、植物の力を必要とする人も多いと思います。お店に来るお客さんやエリ子さんご自身にも、変化がありましたか?
家で育てたハーブは 香りのごちそう。収穫する楽しみも。
萩尾 この冬、皆さんがご自分でハーブを取り入れるヒントになればと、初めてオンラインでのレッスンをしました。香りも手触りも届けられないけれど、伝えたいことはハウトゥーではなくて「心の話」です。ハーブやアロマテラピーで魂を温めることができるということ。こんなときだからこそ、植物たちの力をとくに感じています。
平井 エリ子さんはよく、「植物の気配を取り入れましょう」って言いますよね。私も花のクラスで生徒さんに「外の景色を取り入れる」という話をします。同じ気持ちなのかなと。
萩尾 そう、気配は大事。押し付けがましくなく、そこにあるというだけでいいんです。たくさんの人に会うことができなくても、植物が身近にあればちっとも寂しくありません。かずみさんもそうだと思うけど、ついつい植物に話しかけちゃうの。
平井 わかります! なかでもハーブはよりその気配を感じられる植物ではないでしょうか。香りに深く癒やされるし、薬草というくらいだから薬効にも興味があります。
萩尾 たしかに、ハーブは美しくて匂いがいいだけではなく、ちょっとした不調の手当てにもなる植物です。料理に使ったり、お茶にしたり、精油を希釈したものや蒸留水は肌につけることもできます。最近はセルフケアのためにハーブを求める人も増えました。
好きな香りやお茶が増えてハーブがだんだん身近になる。
平井 私もまさに、ハーブでセルフケアを始めました。朝起きたらセージを焚いて、ハーブティーを飲みます。顔や体に使うオイルも手作り。今の自分にはどんな香りが必要かな? と感じながら、その時々の気持ちや体調に応じて香りをブレンドしています。自分でやってみるのが一番勉強になる気がして。実験みたいで楽しいですよ。
萩尾 素晴らしいです。ハーブを暮らしに取り入れるって、難しいことではありません。料理のレシピと同じで、自分で塩梅できるような“緩み”があったほうがきっと楽しめます。でもアロマテラピーだけは、その精油がどういう物質なのかを知らないといけないので、買うときにお店の人に聞いてみるといいですね。
平井 お茶は、エリ子さんにすすめてもらったリンデンバーム、レモンバーム、ジャーマンカモミールの3種をブレンドしています。おいしくて、大好きな組み合わせです。
萩尾 その3つは伝統的なハーブで、消化器系の不調やストレス、不眠、風邪のひきはじめなどにも飲むといい万能のブレンドです。そうそう、とくに女性は体を冷やしたくないので、季節を問わず温かいお茶を飲みましょう。