「活ける」を思い浮かべてうつわを選ぶ。挿花家、雨宮ゆかさんの食器棚。
そんな理由で同じ食器ばかり使っていてはつまらない。色やサイズ、形を替えれば同じメニューが見違える。旅先で出合ったうつわ、受け継いだ一枚は物語を添えてくれる。日々の食卓が豊かに変わるうつわレッスン、スタートです。
撮影・雨宮秀也 文・太田佑子
「食べる」より先に、「活ける」を思い浮かべて、うつわを選ぶ。
自然のなかにある野の花を、そのまま写し取るように活ける挿花家、雨宮ゆかさん。食器を花器としても使うことの多い雨宮さんのうつわ選びは、
「花を活けたらどんなかんじかな、というイメージが先にあります」
ニュアンスの違う白い皿や鉢、灰色がかったブルーの角皿。水屋に収まったうつわは自然な色合いのものが多い。
「1段分空けて、水屋に季節の花を飾ります。ガラス越しに眺めるのもいいし、花の場ができると思って。場に合わせてうつわを選び、花を選びます」
以前、町中の集合住宅に住んでいたときはどっしりとした土ものが好きだったのが、緑に囲まれた今の家に越してからは、光をきれいに通すガラスにも心惹かれるようになったという。
「花を入れて映えるうつわは、だいたい料理にも合う。自分の暮らす空間に合ったうつわがあれば、じゅうぶんだと思っています」
かき揚げ、干物にも。なんでも受け止める 新宮州三さんの長角皿。
新宮州三さんの2回目の個展のときに買い求めた長角皿。おそらく栗の木で、10年近く使っている。「刳(く)りものならではの手当たりの柔らかさが心地よく、縁のエッジが立っていないのもふだん使いに気が張らなくていい。拭き漆仕上げなので、油ものも気になりません」
かき揚げや天ぷら、干物などものせるし、角皿なので魚の収まりもいい。
忙しい朝を落ち着いて過ごすための、定番メンバー。
花の卸市場に行くなど、雨宮さんの朝は早く、慌ただしい。「だからほとんど毎朝、ホットサンド。具で野菜も摂れるし、手軽ですから」。うつわは、パンの収まりがよく、気軽に使える三谷龍二さんの四角い木皿で、コーヒーはイッタラのカップ。「毎日のことなので定番が決まっていると落ち着きます」
母の食器棚から選んだブルーの小皿に花を活けて。
持ち手がついたような小さなブルーの皿とカットガラスの小鉢。「最初から花を活けるつもりで母に譲ってもらいました」。昭和を思い出させる、どこか懐かしい佇まい。「たぶん、小皿はナッツなど父のおつまみを入れていたような。きれいなブルーで、今のうつわにない雰囲気が新鮮です」
生活から物を減らしても、 一生、連れ添っていくつもりのうつわ。
「年をとったら思考も身軽でありたい。そのためには物からも身軽になったほうがいいんじゃないかな」
母の介護を通じて、だんだんそんな思いを抱くようになったという雨宮さん。まだまだ先のことではあるけれど、その時期が来てもこれだけは持っておくつもりのうつわがある。「白い大皿と2種類の三組椀。白い大皿はシンプルで丈夫、毎日使って飽きません。三組椀は取り皿に、汁椀にも、丼にもなります。質が良くて長く使えるものだからこそ、物が少なくても心豊かに暮らせそうです」
※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。
『クロワッサン』1032号より
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