くらし
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まず女が一人前になるということが出発点です――有吉佐和子(作家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。最終回となる今回は、ベストセラー作家から女性へのエールを届けます。
  • 文・澁川祐子

まず女が一人前になるということが出発点です――有吉佐和子(作家)

1979年7月10日号「『最後の植民地』を翻訳した有吉佐和子さんにインタビュー」より

2年半にわたり、クロワッサン創刊時の誌面から名言を紹介してきたこのコーナー。最終回となる今回は、戦後の日本社会を鋭く描写してきたベストセラー作家、有吉佐和子さん(1931-1984)の女性に向けたメッセージを取りあげます。

名言の出所は、フランスの作家ブノワット・グルーの著書『最後の植民地』を有吉さんが翻訳したことを機に行われたインタビュー記事。本の紹介には〈黒人は独立を勝ち取り、労働者は団結した。20世紀後半の現在、抑圧され、従属し、孤立した女性が解放されるべき《最後の植民地》だ、という意味をこめて有吉さんは、邦題を決定した〉とあります。

インタビューで有吉さんは、これまでの女性運動の功績を振り返りながら、それでもまだ社会的弱者としての女性は存在していると語ります。ただ、〈女性を弱者とする認識からは平等は生まれませんから、そこはほどほどにしなくちゃいけない〉ときっぱり。そして今回の名言に続きます。

女性が1人で立つことから、平等への歩みは始まる。そのうえで、変化には時間がかかることも覚悟しなければいけないと有吉さん。

〈法律的には女性の権利というのが、戦前より良くなっていますから、この傾向が生活の中に融け込むのは、時間をかけてゆっくりやってゆくべきことです。あと三代ぐらいかかるだろうと思っています〉

有吉さんの世代から、今はさしずめ2.5代といったところでしょうか。女性たちを取り巻く状況が、40余年前と現在であまり変わっていないことにため息をつくことも多かったのですが、そんなぼやきを見透かすような指摘です。

昨今のフェミニズムの盛りあがりは、先達が時間をかけてやってきたことの積み重ねの上にあって、最後の踏ん張りどころなのかもしれません。そのためには〈まず女が一人前になるということが出発点〉。この言葉を噛み締めつつ、筆をおきたいと思います。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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