新型コロナウイルスによるロックダウンで、夫と暮らすイタリアへ戻れなくなっているヤマザキマリさん。
「まさかこんなことになるとは思ってもみませんでした。最初は気丈になんとかなるだろうと楽観していたんですが、夫がいかに普段何げなくも大切な話し相手だったのかを痛感しています。東京の仕事場にはイタリアから連れてきた猫と、金魚2匹、そして去年飼っていたカブトムシが産んだ53個の卵が羽化してて、えらいことになってます(笑)。そんなのを毎日見ていると、なぜ人間だけが、何かしなきゃいけないとか、生きている意味を問うのだろうと。ただ大気圏の下にいてポカポカ太陽にあたって、呼吸をしてごはんを食べて、ちょっと楽しいことがあれば、それだけで素晴らしくない? そう思うんですよね」
そんなスカッとした考えを抱くようになったのは、ヤマザキさんの波乱に富んだ人生経験。お嬢様育ちの母親が北海道の交響楽団の一員になり、結婚してヤマザキさんが生まれるが、夫は病死。再婚して妹が生まれるも離婚。シングルマザーとして娘2人を育てた。