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「人生に義務感を与えない」。ヤマザキマリさんの人生を支える決まり。

生きる意味を考え過ぎるから人間はつらくなるのでは? 地球規模で「生」を感じられればそれだけで幸せ。ヤマザキさんの考える幸せの形。
  • 撮影・青木和義 イラストレーション・ヤマザキマリ 文・一澤ひらり

ヤマザキマリ(Mari Yamazaki)
漫画家、文筆家。1967年、東京都生まれ。『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞、手塚治虫文化賞短編賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『地球生まれで旅育ち』(海竜社)など多数。

- 人生を支える決まり - 人生に義務感を与えない。

新型コロナウイルスによるロックダウンで、夫と暮らすイタリアへ戻れなくなっているヤマザキマリさん。

「まさかこんなことになるとは思ってもみませんでした。最初は気丈になんとかなるだろうと楽観していたんですが、夫がいかに普段何げなくも大切な話し相手だったのかを痛感しています。東京の仕事場にはイタリアから連れてきた猫と、金魚2匹、そして去年飼っていたカブトムシが産んだ53個の卵が羽化してて、えらいことになってます(笑)。そんなのを毎日見ていると、なぜ人間だけが、何かしなきゃいけないとか、生きている意味を問うのだろうと。ただ大気圏の下にいてポカポカ太陽にあたって、呼吸をしてごはんを食べて、ちょっと楽しいことがあれば、それだけで素晴らしくない? そう思うんですよね」

そんなスカッとした考えを抱くようになったのは、ヤマザキさんの波乱に富んだ人生経験。お嬢様育ちの母親が北海道の交響楽団の一員になり、結婚してヤマザキさんが生まれるが、夫は病死。再婚して妹が生まれるも離婚。シングルマザーとして娘2人を育てた。

「ヴィオラ奏者の母は演奏旅行でいないことが多く、寂しい子ども時代でしたが、北海道の大自然の中でたくさんの生き物と触れ合っていると、彼らは何かにこだわりを持って生きているわけじゃないのに、美しかったり、一生懸命だったり、毅然として生きている。子どもながらに感動して、自分も彼らと同じなんだと思うようにしたら、孤独感が軽くなっていったんです」

17歳でイタリアに渡り、美術学校に入学、詩人の彼氏と暮らし始めたが、生活は困窮し、様々な仕事をして糊口をしのぐも、27歳での妊娠を機に大きな決断をする。

「子どもが生まれたら家庭を作らなきゃとか、母親にならなきゃとか、それって負荷が大きな生きる宿題みたいなものですよね。私は宿題は大嫌い。私なりの速度で勉強したいし、私のリズム感で物事を見ていきたいし、結婚しようが、子どもを産もうが、そんなの自分の勝手でしょって(笑)。だから生きている義務感を持つのをやめたんです。息子を産んでから、生きる意味はなんぞやなどと深く考えるのはやめて、11年一緒にいた詩人とも別れて、身軽になりました」

それまでは漫画家になろうとは思ったこともないけれど、もしかしたらできるかもという軽い気持ちで漫画を描き始めたというヤマザキさん。その後のめざましい活躍はご存じのとおり。

「今日みたいにまぶしいぐらい太陽が出ていると、植物じゃないけれど、光合成ができるぐらいの気持ちになるんです。細胞が活性化されるみたいな、生物としてのよろこびを感じるんです」

「北海道の大自然で育ったことが、自分が『地球の住人』『大気圏人』であるという宇宙的感覚を育んでくれたと思います」

『クロワッサン』1027号より

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