くらし

感動し得る心を持った人のほうがどれほど幸福か分らない――宇野功芳(音楽評論家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、音楽を味わう心得を、聴き手の達人の言葉から引きだします。
  • 文・澁川祐子
1978年11月25日号「美的生活のためのエッセイ」より

感動し得る心を持った人のほうがどれほど幸福か分らない――宇野功芳(音楽評論家)

「美的生活」をキーワードに、大々的に特集が組まれている1978年11月25日号。そのなかで工芸、アートなど芸術に携わる人々がエッセイを寄せているのが、今回の名言の出どころです。

宇野功芳さん(うの・こうほう、1930-2016)は、クラシック音楽を中心とした評論家であり、指揮者としても活躍した人物。聴き手の達人であった宇野さんは、<芸術とは創造行為である。それならば芸術の享受も創造的行為でありたい>と語ります。さらに<芸術が心の表現であるならば、享受するほうも心で受けとめなければならない>と続けます。

宇野さんが批判しているのは、クラシックの世界にありがちな教養主義。実際、クラシックの入門書には「教養」を冠した本がたくさんあります。しかし、作曲家や曲名に精通しているからといって、本当によい音楽をわかるとはかぎりません。

<いくらピアノが弾けても、音符が読めても、知識があっても、感じる心のない人に良い音楽は無縁なのだ>とバッサリ。よい聴き手となるには<自分の心を豊かにし、感受性を高める以外に方法はない>と断言します。

そして綴られるのが、この名言。曲名や作曲家について知らなくても<感動し得る心>を持っている人のほうがずっと幸福であるーー。ウンチク好きの人には耳の痛い言葉である一方、感動する心があれば、誰にでも芸術は開かれている、というプラスの意味にもとらえられる言葉だと受けとめました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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