食品ロスについて、今知っておきたい基礎知識。
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・柿崎サラ 文・新田草子
「食品ロス」とは、まだ食べられるのに捨てられる食品のこと。出どころは小売店や飲食店などの事業系と、一般家庭に大別される。
「それらを合わせた日本の食品ロスは年間約643万トン。これは東京都民の1年間の食事量に相当します」と、「食品ロス」ジャーナリストの井出留美さん。莫大な量だが、
「クリスマスケーキや節分の恵方巻きの大量廃棄が話題になる中で、食品ロスは企業の問題だと考えている人も少なくありません。でも、食品販売のあり方は私たち消費者の購買行動と深く関わっています。しかも、事業系の食品ロスは全体の55%程度。残りの半数近くは実は、一般の家庭から出ているのです」
金額にすると、一世帯あたり年間およそ6万円。つまり、食品ロスをなくせばこれだけのお金をムダにせずに済むということになる。
家庭から出る食品ロス、実は野菜が一番多い。
〈家庭での1人1日あたりの食品ロス率〉
(1)厚く剥きすぎた野菜や果物の皮、肉の脂身など、調理で取り除かれたが、本来食べられる部分。魚の骨などは含まない。
(2)作りすぎや味付けの失敗などの理由で、食卓に出したけれど食べられることなく残ってしまった料理。全体の3割弱に上る。
(3)冷蔵庫に入れたまま消費期限が切れた食品や、もらったけれど好みではない等そのまま利用せずに廃棄したもの。
家計に税金、地球温暖化、働き方。食品ロスは多くの物事に関わる
もうひとつ、食品ロスを減らすと削減できるのが、処分にかかる経費。
「どの自治体もごみ処理に多大な経費を使っていますが、そのお金は税金でまかなわれています。食品ロスが減ってごみも減れば、その分の税金が有意義に使える。いくつかの自治体では取り組みを進めていて、例えば京都市ではごみを半減する『しまつのこころ条例』を施行し、この20年で実際にほぼ半分に。処理経費を100億円以上削減しました」
ごみの焼却や放置で出るメタンガスが減り、地球温暖化防止になる。また、食料のムダな流通が減ることは、人件費や運送コスト削減にも。
「食品ロスは、単に道徳的なことだけでなく、経済や環境など、私たちの生活のさまざまなことと深く結びついている問題なのです」
自分ごととして捉え、食べ物を捨てない工夫を始めたい。
日本の食品ロスの約半分は、一般家庭から出ている。
〈食品廃棄物と食品ロスの発生量〉
2759万トンの食品廃棄物のうち、「食品ロス」は643万トン。その45%にあたる291万トンは家庭から。食品ロスは身近な問題であることがわかる。
こんな行動が食品ロスを招いている?
□ リストを作らずに買い物に出かけることが多い
□ ダイエットのため、定食や丼もののごはんは残す
□ ビュッフェでつい欲張ってしまう
□ 賞味期限を1日でも過ぎた食品を食べるのは不安だ
□ 新しい調味料を見つけると試したくなる
□ 買い物時、棚の奥の商品を取る
□ 複数購入で値引きされるものは、まとめ買いをする
□ 食品ロスは主に、企業で起きている問題だと思う
『クロワッサン』1014号より
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