3000人以上の女性を抱いた世之介は、光源氏の向こうを張った究極のモテ男。一見、病的にスケベなキャラだし、本作を観た男性は「これぞ男の理想の生き方!」みたいに思うかもしれません。
一般に、女好きな男性ほど実はミソジニー(女嫌い)。好色な男性は女を人間としてではなく「女」として、文字どおり上辺の美しさや肉体だけを愛します。しかし世之介の信条である「女を喜ばせること」は、ただの女好きとは一線を画しているのです。
しかも主人公が挫折し成長する、みたいな説教臭い展開はなく、世之介は懲りない&ブレない! そして世之介のセリフをよくよく聞けば、彼が大変なフェミニストであることがわかります。人生になんの喜びもない母親の人生を可哀想に思い、「日本中のおなごを喜ばしてやろうと決心した」という世之介の女性至上主義は終始一貫していて、女性の境遇にめっぽう同情的。「なんで日本のおなごっちゅうのはみんな不幸せなんやろ」と嘆き、なにがあっても女の味方を貫きます。
「それはこの日本という国が悪いねや。もっとええ国行こ。ほんまにおなごを大事にしてくれる国へ行こやないか」と言う世之介のセリフに胸がすき、この国に絶望した世之介が最後にとる行動がまたナイス。2019年のジェンダーギャップ指数121位という日本が抱える病理を鋭く突きまくった爽快作です!