先輩の中には「数年前までは、ちょいと飲み会に顔出して小噺か謎かけをやればいい小遣いになる営業が、いくらでもあったんだがなぁ」と嘆くかたも多くいました。「ま、そのうち景気がよくなりゃ、またそんな仕事も増えるさ」と。しかしその後、思いのほか不況が長引き、その間に企業も個人も無駄なところに出費することを戒める風潮がすっかり定着してしまったからでしょう、多少景気が持ち直しても芸人があちこちの忘年会、新年会でにぎやかしに奔走するという風景が復活することはありませんでした。
けれど悪いことばかりではありません。いわゆる“お旦(だん)”はめっきり減りましたが、その代わりに落語好きなかたが小さいながら手作りの落語会を主催して、若手中心に勉強の場を与えてくれる“席亭”が増えたのです。おかげでみなさんが、身近で気軽に“落語日和”を楽しんでいただける機会もうんとできていますよ。