「地方にある美術館の魅力のひとつは、常設の展示室で非常にいい作品と出合えること」と林綾野さん。ひろしま美術館のゴッホ晩年の作品《ドービニーの庭》がまさにそれ。「グリーンのグラデーションで描かれ、ゴッホの最後のスタイルを表しています。精神的な葛藤を抱えながらも絵と向き合い続けた情熱が伝わってきます」
また、宮沢賢治を敬愛する林さんにとって、岩手は特別な場所。賢治ゆかりの光原社と岩手県立美術館にはセットで訪れる。ここでのおすすめは彫刻鑑賞。「眺めているうちにぽろっと涙がこぼれた」というのは《ダミアン神父》(舟越保武作)。「ハンセン病患者の救済に尽くした神父の実直な人間性が伝わってくる、名品中の名品です」