くらし

人気絵師たちの代表作をたっぷりと堪能。東京都江戸東京博物館 『大浮世絵展』。

  • 文・知井恵理
東洲斎写楽 《3代目大谷鬼次の江戸兵衛》江戸時代/寛政6年(1794)5月、大判錦絵 シカゴ美術館蔵 Photography (C) The Art Institution of Chicago / Image source : Art Resource, NY 展示期間:通期展示

「浮世絵の名作をこれほどまでに揃えた展覧会は、後にも先にもないだろうと思います」(東京都江戸東京博物館学芸員・小山周子さん)

構想から5年の準備期間を経てようやく開催が実現した本展。国内外で高く評価される5人の浮世絵師にスポットを当て、彼らの代表作を一度に見られるという贅沢な内容だ。

トップを飾るのは、美人画でおなじみの喜多川歌麿。大首絵(おおくびえ)と呼ばれる上半身のみ描く構図を取り入れ、浮世絵界に革命をもたらした。

「個人的にも一押しで、ぜひじっくり見ていただきたいのが『婦女人相十品 ポペンを吹く娘』です。メトロポリタン美術館の作品は保存状態もよく、歌麿が最小限の筆数で、女性の繊細な表情やしぐさを描いているのが見てとれます」

次は、役者画を得意とした東洲斎写楽。今回は28枚のデビュー作のうち、1枚をのぞいてすべて公開。

「明治以降、歌麿と写楽は、海外での評価が高まり、作品も欧米へ流出してしまったため、ここまで揃って見られるのはかなり貴重です」

さらに進むと、風景画の人気絵師、葛飾北斎と歌川広重。代表作の『冨嶽三十六景』や『東海道五拾三次』はもちろんのこと、北斎の『諸国瀧廻り』や『諸国名橋奇覧』、広重の『名所江戸百景』なども数多く展示されており、さながら日本全国の名所を旅している気分になれそうだ。

最後を締めくくるのは歌川国芳。

「歴史や軍記物に登場する英雄や豪傑を描いた武者絵を得意とする絵師です。ユニークな題材、ダイナミックな構図は、現代アートや漫画にも通じますし、細部の描画力の緻密さも見どころのひとつ。こうした理屈抜きで見ても単純に面白いので(笑)、ぜひ期待していてください!」

保存状態のよい作品を選りすぐって展示しているのも本展の特徴だ。当時の浮世絵の鮮やかな色合いを体感してみよう。

歌川広重 《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》江戸時代/安政4年(1857)、大判錦絵 東京都江戸東京博物館蔵 展示期間:12月17日~2020年1月19日
葛飾北斎 《芥子》江戸時代/天保(1830-44)初期、大判錦絵 ミネアポリス美術館蔵 Photo:Minneapolis Institute of Art 展示期間:12月17日~2020年1月19日
喜多川歌麿 《婦女人相十品 ポペンを吹く娘》江戸時代/寛政4-5年(1792-93)頃、大判錦絵 メトロポリタン美術館蔵 Image Copyright © The Metro politan Museum of Art / Image source : Art Resource, NY 展示期間:12月3日~12月22日
歌川国芳 《相馬の古内裏》江戸時代/弘化2-3年(1845-46)、大判錦絵3枚続 展示期間:12月17日~2020年1月19日

東京都江戸東京博物館
「大浮世絵展」〜2020年1月19日(日)

東京都墨田区横網1-4-1 TEL.03-3626-9974 営業時間:9時30分~17時30分(土曜~19時30分。入場は閉館30分前まで) 月曜(1月13日は開館)、12月28日~1月1日休館 料金・一般1,400円 https://dai-ukiyoe.jp

『クロワッサン』1011号より

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