岩谷時子といえば、ザ・ピーナッツの『恋のバカンス』、加山雄三の『君といつまでも』のドラマティックな歌詞が思い出されるが、出発点は海外ポップスの訳詞。代表作は越路吹雪の『愛の讃歌』、そして『ラストダンスは私に』。元は東宝の社員であり、越路吹雪のマネージャーでもあった。遡れば、宝塚歌劇の文芸出版部に在籍し、雑誌『歌劇』や『宝塚グラフ』を担当する編集者だった。宝塚時代のやんちゃな越路吹雪を戦前から支え、スターになりシャンソンを唄いたがった彼女のために寝ないで訳詞をした。
「あのコーちゃんを預かって、男性中心の社会の中で世の権力と戦いながら、しなやかに立ち回っていらした。増えていく作詞の仕事、そこに母親の介護も加わって、男並みに仕事をしながら遊びはなし。慎ましい人です」