「一昨年、出版社のサイトで家族に関するエッセイを書きませんか?とお声がけをいただいたのですが、ちょうどその頃、兄が他界。その前に両親を亡くしていたので、自分が生まれ育った〈生育家族〉が全員いなくなり、〝家族って終わるんだな……〟と思ったところでした。自分の家族の話を通し、〈家族〉像の変化とその意味合いに関して、改めて考えてみました」
酒井家は、昭和一桁代生まれ、“俺が黒と言ったら白いものも黒”という絵に描いたような亭主関白タイプの父親と、父より10歳年下で、戦後教育を受けて育った明るく社交的な母親、そして3歳年上の兄、妹の酒井さんという4人家族。でも、それほど仲の良い家庭ではなかったそうで、
「大人になり友人の話などを聞くと、“両親が仲のいい家庭もある”といったことが徐々にわかり、母親にボーイフレンドがたくさんいたような我が家は特殊だったんだな、と(笑)。しかし今は、『両親と子ども2人』といった
“普通の家族”というものは成立しない世の中。自分たちが家族だと思っていれば、家族なのではないでしょうか」