くらし

酒井順子さんと考えた。いつか必ず「家族」は終わる。大切なのは縁をつなげる気持ち。

長らく、同年代の女性のリアルを綴ってきた酒井さん。近著『家族終了』で考えました。家族が終わった、その先のこと。
  • 撮影・岩本慶三 文・河野友紀

「失うものが増えるのは事実。でもその変化を楽しみたい。」

酒井順子(さかい・じゅんこ)さん●エッセイスト。1966年、東京生まれ。2004年『負け犬の遠吠え』(講談社)で講談社エッセイ賞などを受賞。近著に『家族終了』(集英社)。最新作は『センス・オブ・シェイム 恥の感覚』(文藝春秋)。

「一昨年、出版社のサイトで家族に関するエッセイを書きませんか?とお声がけをいただいたのですが、ちょうどその頃、兄が他界。その前に両親を亡くしていたので、自分が生まれ育った〈生育家族〉が全員いなくなり、〝家族って終わるんだな……〟と思ったところでした。自分の家族の話を通し、〈家族〉像の変化とその意味合いに関して、改めて考えてみました」

酒井家は、昭和一桁代生まれ、“俺が黒と言ったら白いものも黒”という絵に描いたような亭主関白タイプの父親と、父より10歳年下で、戦後教育を受けて育った明るく社交的な母親、そして3歳年上の兄、妹の酒井さんという4人家族。でも、それほど仲の良い家庭ではなかったそうで、

「大人になり友人の話などを聞くと、“両親が仲のいい家庭もある”といったことが徐々にわかり、母親にボーイフレンドがたくさんいたような我が家は特殊だったんだな、と(笑)。しかし今は、『両親と子ども2人』といった

“普通の家族”というものは成立しない世の中。自分たちが家族だと思っていれば、家族なのではないでしょうか」

家をつなげていくという概念が、なくなっているのを感じる。

かつては、結婚をし、その“家”をつなげることを重要視していた時代もあったが、その概念も変化してきている、と酒井さん。

「家をつなげていくには、例えばヨメなどがものすごく我慢をしなければなりませんでした。それが重荷だったからこそ、家族から逃避する人も増えたし、我慢を下の世代に強要しない人も増えたのでは。よく考えれば、なぜ“家”を残さなくてはいけないのか、その理由を深く考える人もいなかった。“理由はわからないけれど、そういうものだから”ということだけで、みんな必死になっていた気がします。歴史のある名家であれば頑張るのかもしれませんが、普通のサラリーマン家庭では、つなげていく意味もよくわからない。だったらむしろ自由に生きるほうが楽しいのでは、となっていったのではないでしょうか」

30代で父親、40代で母親、そして50代で兄を失った酒井さん。人生100年時代と言われる中で、50代はさまざまな意味でターニングポイントだと感じているそう。

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