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【高橋ゆきさん】バージョンアップし続ける、100年時代の人生の味わい方。

今の自分が一番輝いている、をそれぞれのジャンルで体現している高橋ゆきさん。人生後半もめいっぱい楽しむコツを聞きました。

撮影・徳永 彩 文・嶌 陽子

家事代行サービス業務を国家資格にするのが今の夢です。

高橋ゆき(たかはし・ゆき)さん●「ベアーズ」取締役副社長、家事研究家。1969年生まれ。’99年、夫と共に家事代行サービス「ベアーズ」を創業。2013年に一般社団法人全国家事代行サービス協会を設立以来、副会長を務め、’19年より会長に就任。家事研究家としても幅広く活躍。
高橋ゆき(たかはし・ゆき)さん●「ベアーズ」取締役副社長、家事研究家。1969年生まれ。’99年、夫と共に家事代行サービス「ベアーズ」を創業。2013年に一般社団法人全国家事代行サービス協会を設立以来、副会長を務め、’19年より会長に就任。家事研究家としても幅広く活躍。

「 “仕事”ではなく“志事”、 みんなにそう言っています。」

掃除や料理、洗濯などの家事全般、ハウスクリーニング、キッズ・ベビーシッター。幅広いサービスを展開するベアーズは1999年の創業以来、家事代行サービス会社のパイオニアとして業界を牽引している。高橋ゆきさんは、20年前に夫と一緒にこの会社を立ち上げた。

「最近、170名のフィリピン人スタッフが入社したんです。全員が国家戦略特区の認定スタッフで、研修を受けたプロフェッショナル。彼女たちから家事代行サービスを受けながら生きた英語も学べる『カジリンガル』というサービスを開始したら、反響が大きくて」

エネルギッシュに語る高橋さんは最近50歳を迎えたばかり。その心境を問うと、「人生、ここからですよ」という言葉が返ってきた。

1990年代半ばに夫と香港へ渡った高橋さん。現地で仕事と家事や育児の両立に悩む中、香港では当たり前の存在である家政婦、いわゆる「メイド」に助けられた。帰国後、「これから日本に増えるであろう、働く女性を応援したい」という思いから、ベアーズを創業した。「家事代行」という言葉すら、なかった時代だ。

「創業の理由は2つ。ひとつは女性が家事を一人で抱え込まずに済むような、新しい暮らし方の提案をしたいということ。もうひとつは、新たな雇用の創出をしたいということでした」

それから20年。「ベアーズレディ」と呼ばれる、家事代行スタッフの登録数は5200人ほどになる。そのうちの6割が50代以上。最年長はなんと、84歳なのだという。

「ひとつのご家庭に長年通っているベアーズレディもたくさんいます。ご家族の看取りや、新しい命の誕生に立ち会うことも。この仕事は、家族に寄り添う仕事なんです」

1990年代半ば、香港のオフィスで同僚たちと共に。
1990年代半ば、香港のオフィスで同僚たちと共に。
香港生活を支えてくれたフィリピン人メイドのスーザンと。彼女との出会いがベアーズ創業の契機となった。
香港生活を支えてくれたフィリピン人メイドのスーザンと。彼女との出会いがベアーズ創業の契機となった。
1990年代半ば、香港のオフィスで同僚たちと共に。
香港生活を支えてくれたフィリピン人メイドのスーザンと。彼女との出会いがベアーズ創業の契機となった。

ベアーズレディは家族のよう。温もりのある経営を続けたい。

実は、50代で初めてベアーズレディになるという人も多い。この仕事は、子育てがひと段落するなど、女性がそれぞれの人生のステージに合わせてできるのだと高橋さんは言う。

「その代わり、仕事には強い志と愛を持って、『誰かの暮らしに役立つ』という気持ちで取り組んでもらう必要があります。心と行動が乖離していると、質の高いサービスは提供できないし、仕事も自ずと表面的になってしまいますから。私は『仕事』ではなく『志事』と呼んでいるし、周りのみんなにもそう言っているんです」

高橋さん自身、何事にも「志と愛」を持って取り組んできた。

「私は経営に携わる身なので、毎日が選択と決断の連続です。現在、何かを決める際の私の指針は『そこに愛はあるか』ということ。それが世の中の常識かどうかは関係ありません。社員やベアーズレディに対して、顧客に対して、社会に対して、愛があるのか。毎回、自問自答し、あとは直感で決めるようにしています」

取材前後も社内のベアーズレディたちと、互いに楽しげに声をかけ合う高橋さん。「みんなは家族だと思っているんです」と話す。社内だけでなく、社外からも高橋さんと話したいと訪ねてくる人は後を絶たない。多忙を極める中、決して会うことを拒まない姿勢は、どこからくるのだろうか。

「私が37歳の時、父が病気で亡くなったんです。父とは本当に仲が良くて、私の心の指導者であり、世の中のありとあらゆることを教えてくれる師でもあった。父が最期に『死んでいくのは怖くないけれど、会いたい人に会えなくなるのは寂しい』と言ったのを聞いて、“会う”に勝ることはないのではと思いました。温もりある人間関係をもっと大事にしたい、と強く感じたんです。それは今の経営のやり方にも大きく影響していると思います」

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