くらし

【高橋ゆきさん】バージョンアップし続ける、100年時代の人生の味わい方。

  • 撮影・徳永 彩 文・嶌 陽子

「これからの人生後半は、誰かの役に立つことだけしたい。」

社内にある研修室には、キッチンやリビングなどが再現され、清掃やアイロンなどの仕方が学べる。
スタッフの志や仕事を紹介している冊子。右上はベアーズレディが携帯する行動指針などが書かれたカード。
高橋さんがベアーズレディからもらった手紙。

自分をさらけ出したら相手への敬意もより深まった。

50年間、走り続けてきた高橋さん。ベアーズ創業時は多忙のあまり過労で入院したこともあった。

「その頃、パニック障害と診断されたんです。今も完治しておらず、体調不良の日々が続く時もあります。でも長年、周りに隠していたんですよね。『あるべき自分』のようなものにとらわれていたんだと思います」

それが変わったのは3年ほど前。20歳を迎えた息子に、「これから自分自身で人生を切り開いていくにあたって、お母さんのこれまでの仕事や人生について教えてほしい」と、言われたことがきっかけになった。

「息子の言葉を聞いて、『きれいごとだけ教えても仕方ない。ありのままを伝えよう』と思ったんです。その後、社内や講演会でも病気のことを話すようになりました。自分をさらけ出したら、相手も自分の悲しいことやつらいことを打ち明けてくれる。おかげで、周囲に対する敬意も深まったし、人の気持ちをより察することができるようになった気がします」

これからの人生は、誰かのためになることだけをしていきたいと語る。

「『何者かになる』なんて考える必要はないと思うんです。目の前のことを丁寧にして、困っている人に手を差しのべればいい。せっかくここまで生かしてもらったんですから」

40代からは、体づくりも意識するように。今は週2回、筋力トレーニングを行い、食べる物にも気を使っている。

「昔、親しい人に言われたんです。『素敵な50代を送るためには40代の過ごし方が大事よ』って。今、それを実感しているところ。体が健やかなら、心も強くなって、少しのことでは落ち込まなくなるんですよね」

年を重ねるのは素敵なこと。取材中に高橋さんはしみじみとそう言った。

「生きている意味がようやくわかってきたり、感謝の念が深まったり。50代以上のベアーズレディも、それぞれに人生のドラマがあって、みんな素敵な人ばかりなんです」

今後の高橋さんの夢は、そんなベアーズレディが国家資格を得られるようにしたいというものだ。

「こんなに高い技能を持っていて社会に必要とされているんですから。彼女たちにもっと自分の存在価値を感じてほしいんです。ぜひ実現させたい。いえ、実現させますよ」

力強く言い切る高橋さん。その日はきっと遠くないだろう。

『クロワッサン』1003号より

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