閉経は2年前。母と同じような症状が出始めています。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q.閉経は2年前。 母と同じような症状が 出始めています。
朝起きたときに手指がこわばっていたり、足腰の関節が痛かったり。外出する気にもなれなくて、髪もとかさず過ごすことがあります。母も50歳ころ、よく寝込んでいました。父から「また怠けてるのか」と言われていたことを思い出し、もっとわかってあげていればと後悔も……。私も我慢できないほどではないのですが、似たような症状です。更年期の治療が必要かどうか、婦人科に行かないとわかりませんか。(R・T 52歳 主婦)
A.客観的になるためにも、 自分で簡略更年期指数を チェックしてみましょう。
R・Tさんのお母様のお話、よくわかります。ひと昔前まで、女性たちは「更年期障害」という言葉さえ口にできませんでした。ましてや、それが女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで起きること、治療できることも一般的に知られていませんでした。今は、婦人科の専門医で更年期治療を受けられる、いい時代です。R・Tさんも我慢することはありませんよ。
さて、卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌量が減ると、もっと出しなさいという指令が脳からとぶのですが、それがFSH(卵胞刺激ホルモン)。視床下部が司令部ですから、同じコントロール下にある自律神経に影響を与えてしまうのですね。体温調節が乱れてホットフラッシュが起きたり、鬱っぽい気分になったり、多様な症状が起きるわけです。 卵巣機能の低下だけではありません。社会的・環境的要素、本人の気質・体質などの要素も更年期の症状に関係していると言われています。年齢的にちょうど、子育ての仕上げに入り、親の介護が始まるとき。会社では責任も重くなるのも、症状がより複雑になる理由です。
婦人科に行けば、自分が更年期かどうか血液検査ですぐわかるのですが、まずは簡略更年期指数(SMI)でチェックしてみましょう。
【簡略更年期指数(SMI)をチェックしてみよう】
症状の程度に応じて、当てはまる段階に〇をつけ、合計点をつけます。
(強:毎日のように出現 中:毎週みられる 弱:症状として強くはないがある 無:症状なし)
《自己採点評価法》
●0〜25点
上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。
●26〜50点
食事、運動に注意を払い、生活様式などにもムリをしないようにしましょう。
●51〜65点
医師の診察を受け、生活指導、カウンセリング、薬物治療を受けましょう。
●66〜80点
半年以上、長期間の計画的な治療が必要でしょう。
●81〜100点
各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合には、専門医での長期的な対応が必要でしょう。
小山嵩夫ら 1992
いかがでしたか?
婦人科にかかるときは、この結果を持って行ってください。また、基礎体温の測定は、更年期世代にも有効です。高温期がなければ、排卵していないこともわかります。SMIや基礎体温など、自分のカラダを客観的なものさしで知ろうとする姿勢は、これからも大事になりますね。
R・Tさん、つらさを一人で抱え込む必要はありません。自分のカラダにしっかり向き合って、もし治療が必要ならきちんと受けること。快適に生きる手段を求めてください。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。
『クロワッサン』997号より
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