糖尿病予備軍の糖尿病専門医が、歯周病ケアで健康を手に入れた!
撮影・森山祐子 文・越川典子、青山貴子、高橋顕子
糖尿病と歯周病は慢性炎症でつながっている。
西田さんの患者である42歳の男性Aさんも、歯周病治療をしたことで糖尿病が劇的に改善した1人。30代のころから糖尿病を患い、症状が悪化したため入院治療を行うことに。すると入院当日の問診で、「毎朝、枕が赤く染まるほど歯茎から出血する」ことが判明。
「これは大変!とすぐに歯科で歯周病の治療を行ってもらいました。入院当初はインスリン注射を毎日4回打ち、食事制限をしても血糖値は200〜300mg/㎗台でしたが、歯周病の治療が終わるころには、血糖値がするすると低下。インスリン注射の量も減り、そのうちゼロに。退院時には飲み薬1種類だけになったんです」
西田さんやAさんのように、歯周病を治療したことで糖尿病が改善したのはなぜだろうか。
キーワードとなるのは、“慢性炎症”。
肺炎やインフルエンザで高熱が出るような激しい急性炎症に対し、自覚症状のない小さな炎症が身体の中でくすぶり続けているのが慢性炎症だ。
「糖尿病と歯周病は、とても似ているんです。歯周病菌が歯周ポケットの奥深くで増殖すると、慢性炎症を起こし、炎症性サイトカインという悪玉ホルモンが出て血糖値を上げます。一方、内臓脂肪に脂が溜まりすぎて、脂肪が慢性炎症を引き起こすことでなってしまうのが糖尿病です。一見まったく違う病気に見えますが、歯周病と糖尿病は、実は“慢性炎症”という同じ現象でつながっているのです」
その炎症の度合いを測るのが、CRP検査だという。一般的にはCRP値は0.3(mg/㎗)以下が基準値とされているが、本当に健康な人は、0.02以下なのだという。
「歯周病かどうかの目安は0.3前後です。現在は高感度CRPという測定方法があり、0.01まで正確に測定できます。30〜40代になったら高感度CRP値を調べて、自分の慢性炎症の度合いを自覚しておくことが、糖尿病予防のためには大切です」
歯周病治療の効果は糖尿病学会も認めており、糖尿病患者に対する歯周病治療を積極的に勧めているという。「口のケアは、命の分かれ目。その先にあるご利益を、知ってほしいですね」
朝、昼、夕、夜の4回ケアが習慣。口だけでなく気持ちもスッキリする。
★インターネットの公式サイトやオーラルケア商品専門サイトなどで購入可能な商品。
■歯科医院で購入する商品。問い合わせも歯科医院へ。
西田 亙(にしだ・わたる)●にしだわたる糖尿病内科院長。医学博士、糖尿病専門医。愛媛大学医学部卒業、同大学院修了。著書『内科医から伝えたい 歯科医院に知ってほしい 糖尿病のこと』など。
『クロワッサン』978号より
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