からだ

その「眠れない」の理由は? 睡眠外来を体験しました。

  • 撮影・千田彩子 イラストレーション・田中麻里子

脳波、筋電図、心電図……を総動員して田中さんの眠りを調査。

最後のぐるぐるで、緊張感はいやが上にも増してきた……。

睡眠ポリグラフ検査とは、身体じゅうに複数のセンサーを装着し、眠っている時の異常や、中途覚醒、日中の眠気の原因を調べる検査である。センサーはその数20近くにものぼり、頭、目、喉、心臓、胸、お腹、脚、背中……に装着されたセンサーが、脳波や目の動き、筋電図や心電図、さらに呼吸の具合などをオンタイムで記録、別室のモニター室では臨床検査技師たちが朝まで交代制で張り付き、その動きを観察するという仕組みだ。わかるのは睡眠の深さや周期、呼吸の乱れ、いびきや歯ぎしりの有無、などなど。

「寝ている時に、歯をくいしばる自覚症状がうっすらあります」との田中さんの申告を受けて、さっそく顎へのセンサーも追加されることに。ちなみに向こう脛に装着されたセンサーは(下写真)、就寝時の脚のピクつきを見るためのもの
「専門的には周期性四肢運動(PLM)と呼び、睡眠中の上肢、下肢のピクピク動く現象を計測します。これが1時間あたりに何回あるかで、病的な状態であるか、そうでないかを判断します。田中さんは中途覚醒の習慣があると言っていましたので、このような自覚のない睡眠中の問題が原因になっている可能性もあるわけです」(柳原さん)

30分かけてセンサーを装着、仕上げは包帯でぐるぐる巻きに。

環境が変わってうまく眠れるか、が心配。案内された部屋はホテルのシングルルームのよう。ただし、テレビや冷蔵庫の類いはいっさいなし、まさに寝るだけの部屋。不測の事態に備え、天井のカメラが患者さんを常時見守っている。

1泊する部屋はちょっとしたシティホテルのような清潔感あふれる個室。ただシティホテルと違うのは、天井の片隅にモニターカメラが設置されているということ。
「センサーに異常があった時にもすぐに対応できるよう、消灯後から起床時までを交代でモニターします」(臨床検査技師教育係・難波一義さん)

その専門の技師さんの睡眠は大丈夫なのでしょうか?と喉まで出かかった質問をぐっと飲み込む田中さん。今は余計なお世話を焼いている場合ではありません。何しろ人によっては、無呼吸を2分近くも続ける症状の人もいるということで、モニターを見つめる彼らは、一時たりとも気を抜くことができないのである。

およそ30分をかけて、全身にセンサーを装着する。左写真の薬指につけたセンサーは、酸素飽和度低下指数(ODI)を計測するもの。呼吸に異常があると、動脈の血中酸素濃度が下がり、酸素飽和度が低くなる。

スタッフによるセンサーの装着はおよそ30分ほど。全身から次々に線を生やしていく田中さんの姿は、やがてひげ根を伸ばしたニンジンのような様相に。それでも「しっかり寝返りは打てるシステムになっています」(難波さん)と。そして最後の仕上げに、頭部に付けたセンサーが外れないよう、顔に包帯をぐるぐる巻き付けると(こちらは右ページのイラストでご覧ください)、いよいよ後は寝るだけである。

「消灯までの時間は、電話による通話、食事は、原則禁止とさせていただいています」(難波さん)
もちろん部屋にテレビはない。することといえば、家から持参した本を読むくらいのもの。現在時刻、夜の8時過ぎ。毎日、夜のてっぺん(午前0時のことです)まで起きている田中さんにとって、10時の消灯時間はあまりにも早いし、そこに至るまでがまた長い。どうします? 緊張の面もちの田中さんに、念のため、現在の心境を聞いてみると。
「ここまでお膳立てが整って、朝まで一睡もできなかったらどうしよう……。今はむしろそっちが心配です」
と、微妙に周囲を気づかう田中さん。眠りにまつわる悩みはなるほど多様で、かくもデリケートなのです。

モニターの前に座る、頼もしい、睡眠の見張り番。3人の臨床検査技師が交代制で、消灯から起床までをモニターする。画面には睡眠深度、目の動き、呼吸の状態、下肢の動きなどがオンタイムで表示される。個室のナースコールとも直結している。
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