さらに、しっかりと熟成期間を設けることで味は一層深みを増す。
「昔から父親が〝味1年、香り2年、色3年〟と言っていたけど、本物を造るには手間も時間もかかる。うちの味噌や醤油は1年から3年、しっかり寝かせているから、塩角が取れて味がまとまる。これが〝時間の味〟です」
確かに、大久保家の味噌汁は、甘くもしょっぱくもないけれど、うま味が強く、香り高く、それでいて後味は驚くほどすっきりしている。
「アミノ酸を構成する窒素のことをアミノ態窒素またはホルモール窒素というんだけど、うま味成分の指標とも言えるこの数値が高いほどうまい。平均的な味噌は100g中のアミノ態窒素が0.4gくらいなのに対して、うちの味噌は0.63〜1g。この少しの差が、味を決める上では大きな差になる。うま味があるから薄味でもおいしくて、だからこそ飽きずに2杯も3杯も飲めるんだと思うね。飲んだらストンと落ちるように味が切れる、このキレの良さも最高じゃありませんか?」