【知的活動/脳トレ編】脳のためにできること
イラストレーション・前田ひさえ 文・小林百合子
【知的活動】脳トレはゲームやパズルだけにあらず!
ACTION ① 小銭を使って支払うことで計算力をアップさせる
生活の中でできる脳トレが、買い物時のちょっとした計算。
「小銭で代金を支払う際、脳内では瞬時に高度な情報処理が行われています。手持ちの硬貨を確認しながら素早く暗算し、お釣りの枚数を計算する作業は前頭葉のワーキングメモリーや計算能力をフル稼働させます。財布の中から目的の硬貨を探してトレイに出すという一連の動作も、視覚と手先の運動を連動させ、感覚野や運動野を刺激して脳の血流を促してくれますよ」
ACTION ② 計画性と判断力を鍛える家庭菜園やガーデニング
「植物を育てるプロセスには高度な計画性と判断力が求められます。『いつ種をまくか』『水やりの頻度はどうするか』など、季節や天候を予測しながら手順を組み立てる作業は脳を活性化するトレーニングになります」
自然を肌で感じることも、脳へのいい刺激になるのだそう。
「土の感触を手で確かめ、花の香りや色を楽しみ、風を感じるといった体験は、脳の感覚野を刺激して血流を促します。やがて小さな芽が出て、花が咲き、実った野菜を収穫して味わう。植物に愛情を注ぎ、成長を見守る時間は、心の安らぎと安心感をもたらしてくれますし、ドーパミンやオキシトシンもたっぷり出てきます。収穫した野菜で料理をすると、いっそう脳に刺激があるので、おすすめです」
ACTION ③ 失敗も脳トレになる! 手先を動かすものづくり
家具や小物を自分で作るDIYや刺繡、手芸など、手先を動かす「ものづくり」は、脳の様様な領域を同時に刺激する。
「どんなデザインにするかなど、頭の中で理想の立体や図柄をイメージし、寸法や手順を計算して段取りを組み立てる作業は脳をフル稼働させます。間違えた際には工夫して乗り越える試行錯誤をしますが、それも脳の活性化につながります」
工具や針などの道具を使うことも絶好の脳トレになるそう。
「指先を繊細にコントロールする作業は、『第二の脳』と呼ばれる手先を通じて脳全体の血流を促します。作品が完成したときの喜びや達成感はドーパミンをたっぷりと分泌させます」
簡単な木工や小さな刺繡などから始めてみるのがいいかも。
ACTION ④ 明確なゴールを設定して資格や検定の勉強をする
「問題を解くというプロセスを繰り返す資格や検定の勉強は、脳の神経ネットワークを再構築するのに最適な活動。さらに試験日という明確な締め切りが存在することで、計画性と心地よい緊張感が生まれ、脳の活動を一段と活性化させてくれます」
頑張れば目に見える結果がついてくるのもうれしいところ。
「理解できた、合格できたという達成感はドーパミンを一気に放出させます。趣味程度の検定でも充分なので、ぜひ挑戦を」
ACTION ⑤ 料理の腕を磨けば脳はどんどん若返る!
日々の家事の中にも脳を刺激できる作業はたくさんある。中でも料理は最もおすすめだそう。
「料理の最大の効果は高度な段取り力とマルチタスク能力が求められる点。冷蔵庫の在庫を把握し、栄養バランスを考えながら献立を決め、複数の工程を効率よく、並行して進める作業は脳の様々な領域を同時に刺激します。包丁で食材を均等に切り分けるには指先の繊細なコントロールが必要ですが、その動作は運動野を活発に働かせます」
調理中の音や香り、味も、脳を強く刺激する要素になる。
「食材が焼けるジュージューという音、立ち上る香り、そして食べた時の味や彩り豊かな盛り付けは、感覚野をダイナミックに刺激します。完成した料理を味わう満足感や、新しいレシピに挑戦してうまく作れた瞬間の達成感はドーパミンを分泌させ、家族や友人に喜んでもらえたら、オキシトシンも満たされる。料理は五感をフル回転させる最高の脳トレといえます」
ACTION ⑥ ゲームで脳トレするなら生身の人間と対戦を
脳トレ用のゲームはあまた存在するが、おすすめは対戦型かつ先読みが必要なもの。
「将棋や囲碁、オセロ、麻雀など、誰かと競う対戦ゲームは、思考力と判断力を引き出すのに有効な知的トレーニング。相手の出方によって様々なシナリオを頭の中で組み立てながら最善の選択肢を絞り込む作業は、脳のワーキングメモリーや論理的思考能力を活発に働かせます」
オンラインやAIとの対戦もあるが、生身の人間が相手のほうが脳への刺激にはいいそう。
「リアルな対戦相手がいると、表情や仕草、視線の動きから心理や意図を読み取ろうとしますが、その駆け引きが脳に新鮮な刺激を与えるのです。家族や友人と盛り上がりながら対戦するとドーパミンやオキシトシンも分泌されやすくなります。囲碁などルールが難解なゲームだとストレスホルモンが出てしまうこともあるので、オセロなどルールが単純明快で、誰でも楽しめるゲームがいいですね」
ACTION ⑦ 知らない土地を旅してときには迷ってみる
見知らぬ土地を訪れる旅は、楽しみながらできる知的活動。
「知らない土地を歩く時には周囲の風景に意識を向け、観察しますが、その際には注意力や判断力、空間把握能力が刺激され、神経ネットワークが若返っていきます。移動手段を調べ、宿泊先を手配するなど、旅の計画を立てることもいい脳トレです」
近場でできる小さな冒険でも、充分に脳トレ効果はあるそう。
「普段使わない駅で降りて、あてもなく歩いてみるだけでも面白い発見があるはずです。素敵な風景やお店に出合うとワクワクして、道に迷うとちょっと緊張……。そんな心の動きは全て脳にいい刺激を与えてくれます。スマホや地図を見ずに、気ままに散歩するだけでも、脳は生き生きと目覚めていくのです」
ゲームだけでは不充分。多様な認知機能を鍛える
脳トレと聞くとパズルゲームを思い浮かべがちだが、それだけではダメ?
「脳は様々な認知機能が複雑に連携して働いています。記憶力はもちろん、物事の手順を組み立てる遂行機能や言語機能、空間認知機能や注意力、判断力など多岐にわたります。脳トレで大切なのは、これらの認知機能を満遍なく刺激し、鍛えること。日常生活の中でも脳を刺激する活動はたくさんあるので、義務感からではなく、日々、楽しみながら挑戦してみてください」
『クロワッサン』1174号より
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