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「50代の今、着物や日本の伝統文化を暮らしに取り入れていきたい」美容家・余慶尚美さんの着物の時間

撮影・天日恵美子 ヘア&メイク・高松由佳 着付け・奥泉智恵 文・西端真矢 撮影協力・シャルマンシーナ東京

着物の模様にリンクして、八掛と小物に赤を効かせて

「50代の今、着物や日本の伝統文化を暮らしに取り入れていきたい」美容家・余慶尚美さんの着物の時間

美容家、特にヘアケアリストとして、髪の美と健康を保つメソッドを発信する余慶尚美さん。韓国ドラマ愛が高じて毎月1回は韓国へ飛び、近年は韓国タレントのキャスティングも手掛けている。そんな余慶さんに、新たに着物というムーブメントが起こり始めた。きっかけは昨年秋、地元・鹿児島で出席したパーティーだったという。

「高校時代の親友のお母さまがお仕事の関係から盛大なパーティーを開催されることになり、ご招待を頂いたんです。各界からたいへん華やかな顔ぶれの方々がこぞって出席される会とのこと。そんな最高に晴れやかな場に何を着ようかと頭をめぐらせた時、ふと着物が思い浮かびました」

実は、余慶さんが人生で着物を着た回数は数えるほど。それにもかかわらず着物を選んだのは、訪問着から小紋まで、実家に一通りの着物が揃っているからだった。

「全部、大の着物好きの母が私に内緒で買い揃えてくれていたものなんです」

内緒とはどういうことかと言えば、余慶さんは東京の短大に進学したため、高校卒業と同時に鹿児島を離れた。着物には興味がなく、母もそれを知っていたはずなのに、せっせと余慶さんの寸法で着物を誂えていたのだ。

「10年近く、まったく知らなかったんです。何度も帰省しているのに一言も明かさず、ただただ箪笥に新調の着物をぎっしりと詰め込んでいて。いつかきっと私が着ることになると信じていたのでしょうね」

礼装用の黒珊瑚のバッグは祖母から伝わったもの。母が折々虫干しを欠かさず、美しく保たれている。
礼装用の黒珊瑚のバッグは祖母から伝わったもの。母が折々虫干しを欠かさず、美しく保たれている。

何という着物愛。そして、娘への愛。その中の1枚をパーティーに選んだ。グレー地に赤や緑の変わり丸紋が飛ぶ今日の小紋だ。

「初めて目にした時はまだ30代前半だったので、地味だなと感じて袖を通さなかったのですが、50代の今はしっくり来るようになりました。でも、ただのシックな着物ではないんですよね。八掛、そして赤の襦袢が模様の赤とリンクして、絶妙なアクセントになっていて。もちろん襦袢も母が誂えてくれていたものです。着物のおしゃれを知り尽くしているのだなと敬服しましたし、同時に、着物の楽しさも実感しました。せっかく母が揃えてくれたのですから、今年は着付けを習い、カジュアルからフォーマルの場まで、どんどん着て出かけたいと思っています」

白地に若々しい植物模様を織り出した袋帯は、余慶さんの高校の卒業式に母が締めていた思い出の一本。
白地に若々しい植物模様を織り出した袋帯は、余慶さんの高校の卒業式に母が締めていた思い出の一本。

そんな余慶さんに、着物にふさわしい髪作りについて聞いてみた。何しろ日本では古くから

「一、髪 二、化粧 三、衣装」と言う。

「まずお薦めしたいのはつげ櫛です。椿油でメンテナンスをするので歯に成分がしみ込んでいて、とかすだけで髪が健康になっていきます。それから、枕カバーを絹製にすること。髪の主要な成分はタンパク質ですが、絹も同様。だから摩擦が少なく髪が傷みにくくなり、さらに絹には保湿性にもすぐれているという利点があります。絹を味方につけることで、髪の艶が劇的に変わっていきますよ」

余慶さんがつげ櫛を使い始めたのは、ちょうど40代後半に差し掛かる頃だったという。ヘアケアリストとしてあらゆる櫛やブラシを試す中で、故郷・鹿児島の伝統工芸品であるつげ櫛に行き着いたことになる。

「それまで伝統工芸品には古臭い印象を持っていたのですが、一気に見方が変わりました。現代のライフスタイルにふさわしい、モダンなデザインに進化した工芸品が数多くあることにも目が向くようになって。その中で、昨年、着物の楽しさに開眼したことに、一つの大きな流れを感じています。着物を着ると、自然に背筋がしゃんと伸びたり、ゆったりと静かな歩幅で歩くようになりますよね。50代の今、単にものを享受するだけではなく、伝統文化の中にある精神の部分まで含めて体得していきたいと思っています」

  • 余慶尚美

    余慶尚美 さん (よけい・なおみ)

    美容家

    広告代理店勤務後、2007年美容家に転身。リンパドレナージュサロン『Flow』を開業。薬膳・漢方の知見を取り入れた美容アドバイスで支持を集める。近年は特にヘアケア分野に取り組み、’20年『髪トレ』(主婦の友社)を上梓。毛髪診断士。一昨年から本格的に韓国タレントのキャスティングも手掛ける。

『クロワッサン』1137号より

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