お腹が張る、風邪をひきやすい…50代以降は内臓機能の衰えに注意。
女性の体の中では何が起きている? 原因と対策を内科医の常喜眞理さんに聞いた。
イラストレーション・浅妻健司 文・小沢緑子
内臓機能の衰え
不快な症状
□ 2日に1回程度しかお通じがない
□ お腹が張る
□ トイレが近い
□ 血圧が高くなった
□ 下痢することが増えてきた
□ 以前よりも食が細くなった
□ 咳がなかなか治らない
□ しょっちゅう風邪をひく
50代以降、内臓機能を見直すタイミング。
「骨や血管を丈夫にしなやかに保ったり、血中のコレステロールを制御したり、脳の働きを活性化させたり、女性の健康をさまざまに守っている女性ホルモン。その恩恵が少なくなり、加齢で体が変化していく50代以降は、『内臓機能を見直すタイミング』です」
まずは血管。若い頃は低血圧だった人も、自然と血圧は高くなるという。
「さらに加齢で血管が硬く詰まりやすくなるので注意が必要。50年以上使っている血管は古い水道管と同じで、高圧の水流を流し続けたら破裂しやすいリスクがあります」
頻尿や尿もれを訴える女性も増える。
「膀胱の筋力が低下し尿をあまりためられなくなったり、尿を押し出す力が弱り、膀胱に尿が残ると尿意を頻繁に覚えます。セルフケアは、肛門と膣をきゅっと締めながら行う骨盤底筋体操が効果的です」
便秘も油断ができない。
「腸の動きも低下します。便秘は腸閉塞の最大の原因になりますし、腸に長時間老廃物が滞るのは体に悪影響を及ぼすので、最低2日に1回は排便があるよう、適度な運動、睡眠、食生活など、腸の蠕動運動をよくする生活習慣を心がけましょう。もし3日に1回など、頑固な便秘が続く場合は、内科などを受診して一度相談をすることをおすすめします」
また、がんの発症リスクも急激に上がる。
「50代以降は、『がん予防も本腰を入れるタイミング』です。がんは自分の細胞で、小さなうちは自覚症状がありません。早期発見をするためにがん検診は必須。女性の罹患率が高い乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がん検診は定期的に受けてください」
【要注意!】高血圧、がん
〈高血圧〉は放っておくと脳卒中、心筋梗塞、慢性心・腎不全、動脈瘤などの原因にも。血圧が気になる人は、家庭用血圧計で起床時、就寝前に測るのがよい方法。対策は、減塩と、適正体重を保ち血圧を下げること。〈がん〉は検診を受けることが重要。初期段階で見つかれば、より体に負担が少ない治療法が可能。職場や自治体のがん検診に含まれない検査方法は、早期発見のために人間ドックなどで任意で行うのもおすすめ。
40代、50代は心も体も寛容性がなくなっている。気になる症状が2週間以上続いたら、迷わず受診を。
病気というほどではないけれど、日常的に小さな不快、不調な症状が目に見えて増えていく更年期以降。
「20代、30代と年齢が上がるにつれ、体の回復を促す成長ホルモンの分泌が低下していきます。さらに、更年期になると追い打ちをかけるように、女性ホルモンの分泌が激減。次第にムリが利かない体になってきますし、不定愁訴と呼ばれるさまざまな不快な症状が起こりやすくなります」と、女性の体の健康を守る“家庭医”として提言も行う、内科医の常喜眞理さん。
閉経を迎える50代になると、今度は“加齢”の影響も大きくなる。
「加齢で体や脳が老化し始めると、外部からくる変化や刺激に素早く対応する体の『寛容力』も次第に失われていきます。若い頃は放っておいてもおさまった症状も体が耐えられなくなり、症状が頻繁に起こったり長引いたりするようになるのです」
ただし、加齢による体の変化を否定的にとらえる必要はない。
「遅かれ早かれ、誰にでも加齢による老化は訪れます。その変化を慌てず恐れず受け止めて、体の次のモードに向けて備えていけばいいのですから」
対策は、どんな不調も生活習慣を整えるためにバランスのいい食事、適度な運動、充分な睡眠をとることが基本。
「ただ、小さな不調といっても2週間以上症状が続く場合は、クリニックを一度受診を。症状によっては検査をしたり、長引かせないように薬などを使って対処していくことができます」
『クロワッサン』1104号より