5つの食材を食べるだけ! 胆汁酸ダイエットのここがすごい。
撮影/青木和義 編集、文/韮澤恵理 イラストレーション/ノグチユミコ
[ 胆汁酸ダイエットでやせる理由(1) ]
代謝を落とす古い胆汁酸を追い出す。
胆汁酸は全身で代謝を助けている大事な成分。
胆汁酸ダイエットと聞いて、胆汁酸ってなに? と思った人がほとんどではないでしょうか?
エネルギー代謝の研究者で、脂肪燃焼について詳しい渡辺光博さんは、胆汁酸こそ現代人の肥満を解消するキーワードだといいます。
「年とともに、脂っこい食べ物を体が受け付けてくれない感じがしませんか? これは胆汁の分泌が減るのが原因です。胆汁は、肝臓で作られて、胆嚢(たんのう)に蓄えられ、人が食事をすると、消化を助けるために分泌される消化液です。とくに脂質を乳化して小腸から吸収しやすくするのが胆汁の役割。その主成分が胆汁酸なのです」
胆汁酸には消化を助けるだけではなく、ダイエットにかかわる大きな働きがある、と渡辺さんはいいます。
「胆汁酸は、小腸で消化の仕事をすませると、腸の壁から再吸収され、血液に乗って全身に運ばれていきます」
運ばれた胆汁酸は、脂肪細胞を刺激して燃えやすくする働きを持つのだそうです。これが知られざる胆汁酸のすごい作用です。
「胆汁酸の原料はコレステロールなのですが、古代から長い飢餓の時代を生きてきた人間にとって非常に貴重な成分でした。そのため、胆汁酸を腸壁から吸収し、再利用することで、コレステロールのムダ遣いを防ぐ仕組みができているんですね。コレステロールが健康の敵扱いになったのは、本当に最近の短い期間なんですよ」
再利用の必要がない現代では、どんどん排出して、新しい胆汁酸を作ると、コレステロール値も下がります。
劣化した胆汁酸は脂肪を燃やす力が低下。
「飢餓から体を守るためにやむをえず二次使用していた胆汁酸ですが、再利用するとパワーはがくんと落ちてしまうことがわかっています。とくに脂肪燃焼を促す効果は激減しますね」
脂肪が燃えにくくなるということは、体脂肪として蓄積してしまうということですね。それで太りやすくなってしまうのですか。
「そのとおりです。新しい胆汁酸は脂肪細胞に『燃えろ』という指令を送るため、同じ量を食べても脂肪はどんどん使われて、体脂肪になりにくいんです」
食べても太りにくくなるのはうれしいです。
「食事のあとに体が温かくなる経験があるでしょう? これは、分泌された胆汁酸が、燃える脂肪に届いて作用する典型的な状況です」
胆汁酸が脂肪の燃焼にかかわるのなら、新しい胆汁酸をどんどん作れる体になりたいです!
「ところがそうは簡単にいきません。コレステロールをムダにしない仕組みが備わっているので、胆汁酸がリサイクルしているうちは、新しいものを作らないのが人の体なんです」
同じ量を食べているのになんだか太ってきたり、運動をしてもたいして効果が上がらないのは胆汁酸が古くなっているのも原因のようです。年齢とともに太りやすくなるのも、新しい胆汁酸が足りないからかもしれません。
「エネルギー代謝ってとても大事なんです。とくに基礎代謝は、普通に生活しているときに、心臓を動かしたり、呼吸をするなど、生命維持のためのエネルギーなので、24時間、使われています」
基礎代謝が上がるということは、運動や食事制限をしなくてもいいということのようですが……。
「そのとおりです。基礎代謝がよくなれば、普段の生活で使われるエネルギーが増えるので、無理な運動や食べたいものを我慢する必要がない。だから、皆さん続くんですよ」
そう聞くと、ますます古い胆汁酸を追い出して新しい胆汁酸を増やしたくなります。どうしたら、古い胆汁酸を捨てられますか?
「方法は2つあります。まず、肝臓でどんどん胆汁酸の生産ができるようにすること。そして、古い胆汁酸を強制的に排出することです。胆汁酸は腸内の悪玉菌によって劣化するので、腸内環境を整え、善玉菌を増やすことも大切です」
食事をして胆汁酸が分泌されると、脂肪などの消化吸収を助ける。余った胆汁酸は食物繊維などですみやかに便として排出してしまえば新しい胆汁酸(一次胆汁酸)が作られる。
分泌された胆汁酸は脂肪の消化吸収を助け、余りは回腸や大腸の腸壁から再吸収され、肝臓に戻って胆汁の材料になる。再吸収されたのが二次胆汁酸。一次胆汁酸より質が落ち、健康に悪影響を及ぼす。
古い胆汁酸は体に悪い働きも
【大腸がんの原因】
使い回して劣化した胆汁酸は、働きが悪くなるだけでなく、体に悪影響を及ぼす。質の悪い胆汁酸は大腸がんや肝臓がんを引き起こすことが知られている。
【自律神経の乱れ】
大腸内に滞留便が溜まり、流れがよくなくなると、腸の不調がダイレクトに脳に届き、脳が腸のためばかり働くので、自律神経が乱れる。
【肌荒れ、老化が進む】
胆汁酸は脂肪細胞だけでなく、あらゆる細胞を正常に保つ働きがあるため、胆汁酸の不足や質の低下で、細胞が劣化し、老化、肌荒れ、しみ、しわなどの原因にも。
[ 胆汁酸ダイエットでやせる理由 (2)]
新しい胆汁酸は脂肪をどんどん燃やす。
脂肪を燃やす秘訣はベージュ脂肪細胞にあり。
胆汁酸が脂肪細胞を刺激して燃やすことがわかりました。脂肪細胞の数は一生変わらないから、燃やして小さくするのがやせる秘訣。
「脂肪と一口にいいますが、実は全く逆の性質を持っている脂肪細胞があります。食事から摂ったエネルギーのうち余った分は中性脂肪になり、脂肪細胞に溜め込まれます。これは白色脂肪細胞という『溜め込み細胞』で、肥大化して、結果として太ってしまうんです」
お腹がぽっこり出たり、お尻がムチムチするのは、溜め込み型の白色脂肪細胞が大きくなっているわけですね。
「そう。ふくらんだ脂肪細胞が皮膚の下に溜まるのが皮下脂肪。お腹、とくに腸の周りの脂肪細胞が大きくなるのが内臓脂肪です」
ということは、溜め込まない脂肪細胞もあるということですか?
「褐色脂肪細胞というのが、燃える細胞の代表なのですが、肩甲骨や肩の周りなどの一部に限定されていて、量も少なめなんです」
それでは胆汁酸で刺激しても、あまり代謝が上がらないのでは?
「これまでは、燃えるのは褐色脂肪細胞だけといわれていたのですが、最近の研究では、褐色脂肪細胞に近い働きをする『ベージュ脂肪細胞』も燃える細胞として注目を集めています」
初めて聞きますが、体のどこにあるのですか?
「実はベージュ脂肪細胞は、溜め込み型の白色脂肪細胞に混ざっているのです。ベージュ脂肪細胞が新鮮な胆汁酸によって効率よく燃えると、それに伴い、近くの白色脂肪細胞も小さくなります。これが、ぽっこりお腹に胆汁酸ダイエットが効果的な理由です」
それは朗報です。とくに新鮮で良質な一次胆汁酸が腸壁から吸収されると、腸の周囲についた内臓脂肪の中にあるベージュ脂肪細胞に、燃焼するよう指令を出すのだそうです。
適正な食事量を守り、さらに軽い運動をすれば、より基礎代謝が上がるので、効果的。
「正しいダイエットは3週間程度で体重を2〜3kg減らすことを目標にしてください。それ以上急激に体重を減らすのは『エネルギー代謝の異常』で、ダイエットではありません」
改めて、きつい運動を始めるとか、食事を減らすダイエットは続きません。軽いウォーキングや階段の上り下りを意識する程度で、いつもの生活を続けるのが、ダイエットを長続きさせるポイントだと渡辺さんはいいます。
(同じ量を食べても)
省エネ型
↓
代謝が悪く、エネルギーの消費量が少ない。食べた分を消費しきれず、脂肪として溜め込むタイプ。
燃焼型
↓
代謝がよく、普段の生活でもどんどんエネルギーを消費。たくさん食べても太らないタイプ。
(エネルギー代謝ってこんなこと)
食べたものは体内でこんなふうに使われます。
細胞がエネルギーをたくさん必要とすれば、太りにくい体になります。
●皮下脂肪
余った栄養が体の各所の脂肪細胞に溜め込まれる。内臓脂肪より落ちにくい。
●内臓脂肪
余った栄養が内臓の周りの脂肪細胞に溜め込まれ、大きくなっている。比較的減らしやすい。
『Dr.クロワッサン おなかが凹む胆汁酸ダイエット。』(2021年4月13日発売)より。