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結局、女性ホルモンの減少に由来? 専門医に聞く、更年期に起こりがちな痛みを改善する方法。

頭痛、腹痛、関節痛に性交痛……。
避けては通れない更年期に起こりがちな痛みを改善する方法や心の持ち方について、専門医に聞きました。

文・長谷川未緒 イラストレーション・松栄舞子

そもそも更年期って一体、何が起きているの?

結局、女性ホルモンの減少に由来? 専門医に聞く、更年期に起こりがちな痛みを改善する方法。

女性医療クリニックで理事長を務める医学博士の関口由紀さんによると、

「閉経の平均年齢は51歳、その前後5年を更年期といいます。おもに45歳〜55歳のこの時期、女性ホルモンの分泌がガクッと減りホルモンバランスが乱れることで、自律神経失調症のような不調が起こりやすくなります。のぼせやほてり、めまい、頭痛、手足の痛みなどのほか、イライラ、気分の落ち込みなど、メンタルへの影響も大きい」

閉経にともなうこれらの不調を更年期症状といい、治療が必要なほどひどいものを更年期障害という。めまいや頭痛には病気が隠れていることもあるため、自己判断で更年期のせいにせず、気になる症状があったら内科や脳神経外科など専門科を受診しよう。

更年期に体の痛みが起きる理由とは?

一般的に、更年期には女性ホルモンがピーク時(約30歳)の10〜20%程度にまで減少する。この減少が段階的に起こればいいが、卵巣もなんとか機能を維持しようとがんばるため、不規則にアップダウンを繰り返しながら、減少していく。すると脳の視床下部が疲弊し、痛みを感じやすくなるという。

「痛みがあるところは炎症が起きていることが多いんです。ふつうなら痛みを感じない軽い炎症も、脳がダメージを受けていると心身が知覚過敏のようになり、痛みを感じやすくなります」

婦人科では女性ホルモン値を血液検査で調べることができる。このとき正常の範囲内だったとしても女性ホルモンのせいではないとも限らない。ホルモン値が少し変化しただけで、痛みを感じやすくなる人もいるからだ。30代にはなかったのに、40代になって始まった痛みがあり、病気が見つからない場合は、ホルモンの影響を疑っていい。

「女性ホルモンの変調が原因とわかっている更年期の痛みは、治療しやすいんです。原因がわかっただけで、安心して症状が軽くなる方もいます。食事療法や漢方、ホルモン補充療法、抗うつ剤など、その人の症状やタイプに合わせて治療を選択すれば、効果は上がりやすいと思います」

痛みを改善するには、鈍感力を鍛えること。

更年期に痛みを感じやすいのは、心身が知覚過敏のような状態だから。そのため鈍感になれば、慢性的な痛みは感じにくくなるという。

「鈍感力を鍛える一番の方法は、運動です。息がはぁはぁするくらい心拍数の上がる運動と、ぐっと力の入る運動、たとえばエアロビクスや筋トレなどを組み合わせて定期的に行うことで、痛みが改善する場合が多いです。ちなみに私は腹筋、背筋、スクワット、ランニングなどを行っています」

運動する際に気をつけたいのは、痛みが強いときは無理してやらないこと。痛みの最高値を10とした場合、8以上の日は暖かくして安静に。それ以外の日、特に痛みが3〜4くらいの軽い日は、なるべくアクティブに動きたい。慢性痛がある人は、痛みが0という日はないため、0になるまで運動しないというのでは機能が低下してしまう。

「できるときに弱いところを鍛えていきましょう。今日は痛みが強いから痛み止めを飲んでゆっくり休もう、今日は元気だから走ろうなどと、痛みレベルを判断して、行動を決めること。自己決定できる人は、できない人よりも早く痛みが改善されていきます」

痛みは弱いところに出てくる。

更年期に生じる痛みは、たいていの場合、その人がもともと弱い部位に出やすいのが特徴だ。たとえば若い頃から、天気が悪い日に頭痛がしたり、疲れると歯が痛くなったりと、調子の悪いときに痛みが生じる人は、更年期になると慢性痛になりやすい。また、事務作業をする人は手指の関節、声をよく出す仕事の人はのどなど、使い過ぎている部分も痛みが強調されやすくなる。

「低ホルモン状態に慣れてしまえば、痛みを感じにくくなることも多いんです。それまでは弱い部分をいたわりながら生活することも大切ですね。更年期に入ったら優先順位を明確にして、それまでの半分くらいのイメージで仕事や家事、趣味などをすると、慢性痛になりづらいと思います」

こんなとき、痛みが弱くなりませんか?

■ 天気がいい
■ 気になっていた人間関係が解決した
■ 昨日の夜早く床についてゆっくり寝た
■ 食事のバランスがとれている
■ 楽しみにしている予定がある

痛みのレベルがどのくらいか自分で判断することが難しいという人は、上記のチェックリストを参考にしよう。チェックリストが埋まるような日は、痛みレベルが軽いことが多いので、運動をして、弱いところを鍛えていこう。

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