人間が「正しい姿勢」を保つことができるのは、腹筋・背筋・大臀筋(だいでんきん)の3種類の筋肉のおかげです。そのため、大半の腰痛の要因は、これらの筋肉が衰えることで姿勢が悪化してしまうことです。
かつて、腰痛は痛みが治まるまで安静にしているのが常識でした。しかし、近年は痛みが激しい急性期(最初の2〜3日ほど)が過ぎ、安静にしていれば痛まない、または腰を温めると痛みが和らぐような慢性期に入れば、筋肉の衰えによって症状が悪化するのを防ぐために、積極的に動かすことが腰痛対策の新常識とされています。
体を動かす際に、特に心がけてほしいのは次の3点です。
(1)硬くなっている腰回りの筋肉や関節を伸ばしてやわらかくする
(2)腰の骨や股関節を伸ばして動きをよくする
(3)腹筋(腹直筋・腹斜筋)や大臀筋を鍛える
なお、背筋は立ったり座ったりという日常の動作で使うため、熱心に鍛える必要はないそうです。筋肉の強さは腹筋が2に対して背筋は1ぐらいがちょうどよいうえ、背筋を鍛えすぎると上半身が後ろに引っ張られ、反り腰になるリスクが高くなるので要注意です。
本書では腰痛の予防や改善に効果がある体操とストレッチングをいくつか紹介しますが、最初からすべてを行う必要はありません。自分ができる体操やストレッチングを選び、無理のないペースで始めれば大丈夫です。
ただし、医療機関で治療中の人や高血圧や心臓病がある人などは、本書で紹介している体操やストレッチングを行ってもよいか、治療を担当している医師に相談する必要があります。
また、腰痛以外の体調不良(熱がある、安静時の脈拍が1分間に90以上ある、めまいがする、胸が痛い、吐き気がある、など)がある場合は、運動を避けましょう。
もちろん、頭痛やめまいがする、冷や汗が出る、足・腰・関節が強く痛む、などの体調不良が運動中に現れた場合も、すぐに中止してください。