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胃の不調を改善すれば、夏の疲れは軽減できる。

夏バテ症状の原因が、実は胃の不調からきていることも。
生活習慣を見直してすぐに実践できる対策。

撮影・柳原久子 イラストレーション・秋山 花 文・嶌 陽子

そもそも、なぜ胃は夏に疲れてしまうことが多いのか?

胃の不調を改善すれば、夏の疲れは軽減できる。

夏に胃が不調をきたしやすいのは、主に2つの理由がある、と兵庫医科大学名誉教授の三輪洋人さんは話す。

「1つ目は自律神経の乱れです。自律神経は胃の働きにも作用するため、屋外の猛暑と室内の冷房という激しい気温差によりダメージを受けると、胃の機能も低下してしまいます。2つ目は大量の発汗に伴い、水を多く飲むことで血液中のナトリウム濃度が低下し、電解質のバランスが崩れること。これが食欲不振などの不調につながるのです」

本来、胃は内臓の中でも加齢による影響を受けにくい臓器。胃を衰えさせるのはピロリ菌のほか、自律神経の乱れによるところが大きい。

「食生活や生活習慣を改善すれば、胃を元気に保つことができます」

夏こそしっかりと心がけたい。

胃の不調を避けるために心がけたいこと。

弱りがちな胃の機能を助けるためには、胃に負担をかけない食生活を送ることが大切。食べ過ぎは何よりの大敵なので腹八分目を心がけよう。よく噛んで、なるべくゆったりした気持ちで食事をすると、自律神経のバランスを整えることもできる。

また、刺激の強いものを食べ過ぎると胃酸の分泌量が増え、それによって胃の痛みや胃もたれなどが起きることも。増えた胃酸が食道に逆流する「逆流性食道炎」にもなりやすい。

これを避けるためには脂っこいものや辛いもの、熱いもの、肉や魚などの動物性たんぱく質をとりすぎないなど、食生活を見直すことが必要。寝る3時間前には食事を終える、うつ伏せで寝ないことも胃酸の逆流を防ぐのに有効だ。

さらに猫背やスマホ姿勢も前かがみになることによって胃を圧迫し、胃酸の逆流を引き起こしやすいという研究報告もある。できるだけ姿勢をまっすぐにするよう日頃から心がけよう。腹部を締め付ける服やパジャマも禁物だ。

不調を感じたらすぐにできる、胃をいたわるセルフケア。

いつでも、どこでもすぐにできるのが深呼吸だ。深呼吸は自律神経のバランスを整え、横隔膜を鍛えることにより胃の運動を活性化させる。

鼻から息を吸いながらお腹を膨らませ、吐きながらお腹をへこませる「腹式呼吸」と、鼻から息を吸いながらお腹をへこませ、吐きながらお腹を膨らませる「胸式呼吸」をそれぞれ数回ずつ行うと、胃の不快感が和らぐことがある。

また、胃の機能改善によいとされるツボを刺激する方法もある。下のイラストにある3つのツボはどれも胃もたれや食欲不振、消化不良、倦怠感などのケアに効果的とされるもの。優しく10〜20秒押す動作を数回繰り返そう。

胃の不調と疲労の改善に効くツボ

胃の不調を改善すれば、夏の疲れは軽減できる。

●中脘(ちゅうかん)

おへそとみぞおちの真ん中。おへそから、人差し指から小指までを揃えた指の幅の分だけ上がったところ。体の中心線上にある。

胃の不調を改善すれば、夏の疲れは軽減できる。

●胃兪(いゆ)

背中側、両方の腕を下ろして左右のひじを結んだ線と背骨の交差点から、親指の幅2本分ほど外側に離れたところ。左右にある。

胃の不調を改善すれば、夏の疲れは軽減できる。

●足三里(あしさんり)

膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみを見つける。そこから、手の人差し指から小指までを揃えた指の幅の分だけ下がったところ。左右の足にある。

  • 三輪洋人

    三輪洋人 さん (みわ・ひろと)

    兵庫医科大学名誉教授、 川西市立総合医療センター総長

    医学博士。兵庫医科大学副学長、同病院副院長、消化管内科主任教授を経て現職。専門は消化器内科。著書に『胃は歳をとらない』(集英社新書)。

『クロワッサン』1073号より

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