からだ

コリや不調と切っても切れない、背骨と筋肉の関係を知っておこう。

背骨を支え、動きをつくりだしているのが筋肉。背骨に関係する筋肉が凝り固まると、背骨の自然なカーブが崩れ不調に。筋肉を意識することが背骨を意識することに繋がります。
鍼灸師であり指圧師の石垣英俊さんに教わります。
  • 撮影/岩本慶三 文/石飛カノ モデル/北川リサ スタイリング/高島聖子 ヘアメイク/村田真弓

(背骨を支える主な筋肉)

【脊柱起立筋】
腰から上の背骨が直立するのを支える筋肉の集まり。背骨を伸ばす、曲げる、反らすなどの動きをつくる。呼吸や排便など生理現象を助ける働きもある。

【回旋筋】
背骨を左右に回し、胸椎でよく発達している。背骨の状態を感知するセンサーの働きもある。「胸椎ひねり」で日常的にケアしよう。

【多裂筋】
腰の部分でとくに発達している深部にある筋肉。腹横筋や骨盤底筋群などと協働して腰椎の姿勢を保持している。

【僧帽筋】
後ろ頭の下部から首、肩、背中に広がる筋肉。この筋肉が凝り固まると肩こりに。重力に逆らって体を引き上げる役割も。

【板状筋】
頚椎から後頭部を繋ぐ筋肉と、胸椎から後頭部を繋ぐ筋肉からなる。頭が前に倒れないように働き、下を向き続けると緊張しやすい。

【菱形筋】
腕の動きをサポートする肩甲骨の位置を決める筋肉の一つ。肩甲骨同士を引き寄せる動作はこの筋肉の働きによる。

【広背筋】
背骨と骨盤、肋骨と肩甲骨、腕の骨までを繋ぐ筋肉。上半身で最も大きい。肩や腕の動き、腰を反らせる動きなどに関係している。

【腰方形筋】
骨盤、腰椎、肋骨を繋ぎ、腹腔の後ろ側の壁を作る筋肉。腰を安定させ、腰椎が横に傾く動きをつくりだす。

【大腰筋】
背骨、骨盤、大腿骨を繋ぐ筋肉。横隔膜とも繋がっている。この筋肉が緊張すると骨盤が前傾し、腰痛や脚のしびれなどの不調が。

筋肉が緊張すると背骨にムリがかかる。

背骨だけでは立つことも、曲げることもできない。背骨を支え、動かしているのは、大小のさまざまな役割を持った筋肉だ。

どのような筋肉が普段の動作に関係しているのかを大まかにでも知っておけば、筋肉によって支えられる背骨に意識が向くはずだ。

たとえば僧帽筋は、後頭部から肩、背中を繋ぐ大きい筋肉。スマホやパソコンを長時間使っていると猫背になって首が前に突き出た状態になりやすい。

そのとき約5kgの頭は重力の作用で下方に向かおうとする。その重力に逆らって頭を上へと引っ張っているのが、僧帽筋や板状筋などの背中の筋肉。その姿勢が続く限り、僧帽筋は緊張し続ける。背骨は丸まり、それが肩こりや頭痛を招くことにもなるのだ。

こうした不調を解消するには、凝り固まった筋肉の緊張をゆるめ、背骨本来のカーブを取り戻すこと。楽に過ごせる姿勢を維持するために、背骨と筋肉は切っても切れない理由がここにある。

(深い呼吸で背骨の老化をストップ!)

(A)息を吐くと横隔膜が上がる。
息を吐くと横隔膜が上がり、肺が押し上げられて小さくなる。それにつれてお腹がへこんでいく。

(B)息を吸うと横隔膜が下がる。
息を吸うと横隔膜が下がり、肺が膨らみ、お腹も膨らむ。横隔膜の上下運動は腸をはじめとする内臓のマッサージ効果もある。

腹式呼吸で背骨をしなやかに。

腹式呼吸は横隔膜の上下を意識して行う、深い呼吸。その横隔膜の一部は背骨についている。息を深く吸って次第に横隔膜が下がってくるとお腹が膨らみ、同時に、背骨が伸びる。息を吐けば元に戻る。腹式呼吸を続ければ、しなやかな背骨づくりが期待できる。

深い呼吸をして、背骨エクササイズ。

筋肉の緊張は、呼吸にも影響する。近年、呼吸の浅い人が多いといわれている。浅い呼吸がよくないのは、十分な量の酸素が肺に届かず、血液中の酸素濃度が低くなるからだ。脳をはじめ酸素を必要とする臓器の働きにも影響が及び、自律神経にも乱れが生じ、やがて不調となって現れる。

その原因の一つが、現代人につきもののストレスだ。ストレスにさらされると筋肉は緊張する。息を吸って吐くという一連の動きにも筋肉の働きは欠かせない。呼吸に関わる横隔膜、肋間(ろっかん)筋、斜角筋、大胸筋などは肺を保護する肋骨についていて、横隔膜の一部は背骨にもついている。こうした筋肉が、ストレスのために緊張して固くなってしまうと、しっかしりした呼吸ができなくなるのだ。

ストレスを感じたときに、深呼吸がすすめられているのは、意識して呼吸を深くし、自律神経を整えるため。深い呼吸をすると、肺の下にある横隔膜が大きく上下する。息を吐くと横隔膜が上がり、吸うと下がる。そのときお腹がへこんだり膨らんだりするが、同時に反対側の背骨も後ろに伸びたり元に戻るを繰り返している。深い呼吸が背骨のエクササイズに。

最後に、背骨の健康のために日光を浴びる時間を。丈夫な骨づくりに欠かせないビタミンDの生成に紫外線が関わっているからだ。季節や緯度によっては日光だけでは不十分だが、1日15分を目安に。日光浴を兼ねてほんの少し速足のウォーキングもおすすめ。筋肉に負荷がかかると骨は丈夫になる。

石垣英俊

教えてくれたのは

石垣英俊 さん (いしがき・ひでとし)

鍼師、灸師、あん摩マッサージ指圧師

静岡県出身。臨床家の父親に鍼灸治療を師事。体の痛みや不調に悩んでいる人へ、よりよい施術、環境、アドバイスを提供すべく研鑽を積んでいる。神楽坂ホリスティック・クーラ(R)代表。著書多数。

『Dr.クロワッサン 痛みとコリをすっと消す、自分でできる整体』(2020年4月28日発行)より。

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