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質の悪い涙がドライアイの原因?食生活にも気をつけて!【クロワッサンライターの身になる話】

クロワッサンのライターがお役立ち情報を発信する連載【身になる話】。執筆した医療・健康本は100冊を超える医療ライターが説く、ドライアイと食生活の密接な関係とは?
  • 文・韮澤恵理

エアコンにスマホ…目の乾燥には対策を!

写真はイメージです。

最近、身近な人から「目が乾いてつらい」という声をよく聞きます。目薬をさしたりしてがまんしている人が多いようですが対策としては十分ではありません。
そもそもこの症状、目の表面に涙が十分に行き渡らないドライアイというれっきとした目の病気の可能性あり。エアコンがきいた室内にいる時間が長くなったことに加え、PCでの事務作業やスマホを凝視する時間が長くなったといったことが原因といわれています。

ドライアイでは、目の乾きを感じるほか、いつもゴロゴロする、目が疲れやすい、かすんで見える、目やにが出るなど、さまざまな症状が起こります。目の不快感が続くなら、ドライアイが原因かもしれません。

普通なら常に適量の涙が分泌され、目の表面を覆っているのですが、なんらかの原因で涙が不足し、眼球の表面が不安定になってしまうのがドライアイ。そのため、まぶたが目の表面をスムーズに動かず、引っかかった感じがしたり、表面の滑らかさが失われるために物がかすんで見えることもあります。「年齢のせいかな」と放置していると、角膜や結膜に傷がつき、視界が濁ったり、炎症を起こしたりするので注意が必要です。

ドライアイの原因は涙の分泌不足と、空気の乾燥による涙の蒸発です。涙の分泌量は年齢とともに減っていくことに加え、現代の湿度の低い環境が追い打ちをかけています。エアコンのきいた室内にいると、のどが渇いたり、皮膚がカサつくのと同じように、目の表面からも水分は奪われるのです。「蒸発するなら水分を補おう」と頻繁に目薬をさす人が多いのですが、一時しのぎなだけでなく、より乾燥を進めてしまうことも。ドライアイについて、正しい知識を持つことが大切です。

涙の質は水分と脂で決まります。

目の乾燥は涙の質によっても左右されることをご存じでしょうか? 繊細な目の表面を守っている涙は、「水」と思いがちですが、水だけではどんどん蒸発してしまいます。涙の蒸発を防ぎ、目の表面をなめらかに保っているのは表面にあるわずかな脂質の層なんです。

涙は大きく3層構造になっていて、目と涙を密着させている粘性のたんぱく質「ムチン層」、潤いを保つ水分でできた「水層」、そして空気と触れる一番外側には脂質でできた「油層」があります。この脂の膜が涙の蒸発を防ぐ大切な役割を果たしていることを知っている人は少ないのでは。

最近では特に、目の脂質の不足がドライアイの原因という人が少なくないのだそう。油の膜がなければどんなに水分を補っても焼け石に水ということですね。

一口に「涙」と呼びますが、水分は目頭側にある涙腺から分泌され、脂質はまぶたのすぐ裏側にあるマイボーム腺から出ています。水と脂は別のルートで目に届けられているのです。

目の乾燥を防ぐために大切な脂質の分泌量が減る原因には2つあります。1つは出口であるマイボーム腺の詰まりです。

目を守る脂質は不飽和脂肪酸の摂取を心がけて。

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脂肪や異物が出口で固まってしまい、マイボーム腺を塞いでしまうことがあります。すると脂質が分泌できなくなり、目はどんどん乾燥します。アイメークなどが目に入ったり、加齢によるホルモンのバランスの乱れなど原因はいろいろですが、分泌される脂の質が重大なポイントだというのは眼科医の見解。固まりやすい脂質を多く食べていることがドライアイの誘引になるといわれています。

食事で摂った脂の質で、マイボーム腺の詰まりやすさも変わることがわかってきています。脂質には、バターやラード、肉の脂身のように常温で固まる飽和脂肪酸と、ごま油やオリーブ油のような植物油、魚の脂など、常温では固まらない不飽和脂肪酸があります。固まる温度の低い飽和脂肪酸はマイボーム腺の詰まりの原因になりやすいのです。肉やバターなど、飽和脂肪酸の多い食生活を続けていると、脂肪の詰まりが起きやすいといえます。

脂不足が招く乾燥症候群

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涙を守る脂の不足は、そもそも油の摂取自体が足りていないことも少なくありません。ダイエットでオイルカットしたら皮膚がカサカサになってしまったという話を聞いたことがありませんか? 脂質は細胞膜や神経組織、ホルモンなどの材料になる大切な栄養素で、摂取量が足りないと、まず皮膚や涙から節約を始めます。肌がカサつくと感じたら、目の脂も不足しているかもしれません。

「太るから」「コレステロールが高いから……」と極端に油を避けている人は要注意です。適量の油は必要だと心得てください。油は植物油のような固まりにくいものがおすすめ。中でもオメガ3脂肪酸を多く含むアマニ油やえごま油、青背魚の脂質は、血液の質をよくし、脳や目の健康を保つという研究が進められています。

血流をよくして脂をサラサラに保つ

血行不良によるまぶたの冷えもマイボーム腺の詰まりを引き起こす原因だとされています。末梢の血液循環が悪くなると、皮膚表面や粘膜の温度が下がります。このために、通常は溶けている脂質がかたまり、出口を塞いでしまうことがあります。こうした意味からも血液をサラサラにして血流をよくするEPAを豊富に含むオメガ3系脂肪酸の摂取はおすすめ。ただし、酸化しやすく熱に弱いのが弱点なので、加熱せずに利用しましょう。新鮮なうちに使い切れる量を購入することもポイント。加熱調理にはごま油やオリーブ油をうまく使い分けるのがいい方法。

さらに、老化を防ぐ抗酸化物質のポリフェノールやカロテノイドをたっぷり含む食材を摂ると、目の健康が保てます。緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンは、目に効くビタミンAの原料。β-カロテンは脂溶性なので、良質な油と一緒に摂るとより効果が上がります。にんじんサラダやパプリカのマリネなどは抜群によいレシピ。パプリカに豊富なルテインや、青菜やブロッコリーに多いゼアキサンチンは網膜を保護する働きもあります。

毎日手軽に取り入れるには、色素成分をたっぷり含む緑黄色野菜をスムージーや簡単サラダにし、オイルをプラスするのが手軽。目にいいパプリカは電子レンジで1分ほど加熱してガラスープの素でさっとあえ、アマニ油を一回しするだけで無限に食べられるおいしさですよ。鰹節をかけたり、レモンを絞ったり、ごま油でナムルのようにしてもおいしい。

パプリカは細切りにして電子レンジで加熱すると油との馴染みがいい。皮が気になる人はグリルで真っ黒になるまで焼くと簡単に皮がむけます。
オリーブ油やアマニ油を回しかけて塩をパラリ。シンプルでも飽きない習慣。

ゼアキサンチンをたっぷり含み、生でも加熱しても食べられる小松菜もオススメ。洗ったらザクザク切って冷凍しておけば、凍ったまま炒め物にもスムージーにも使えます。小松菜スムージーは手軽で食物繊維も摂れる優等生ドリンク。冷凍フルーツと水を加えてガーッとミキサーにかけて、仕上げにアマニ油やえごま油をひとたらしするのがコツ。これなら脂質とポリフェノールが同時に摂れます。

小松菜は新鮮なものをザクザク切って冷凍しておくと、凍ったままスムージーに活用できます。

写真は小松菜とパイナップルに水とアマニ油を加えてミキサーにかけたスムージー。オイルをスプーン1杯程度加えるのが「目活」に。フルーツはオレンジやレモン、りんごなど旬のものをチョイスしてみて。バナナと牛乳などアレンジは自由に。

まばたき、足りてないかも?

目の乾燥の原因はまばたきの回数も大きく影響します。特にスマートフォンを凝視しているとまばたきは減りがち。涙や脂質の分泌はまばたきと連動しているので、目を見開いていると空気の乾燥に加え、涙の供給量も減ります。一度自分のまばたきの回数を意識してみましょう。

エアコンや扇風機の風が直接顔にあたっていないかどうかも要チェック。急いで涼みたい、温まりたいからと、送風口の近くに座るのはおすすめできません。

目が乾いた時にはつい目薬をさしたくなりますが、成分によってはさらに目が乾燥する場合も。ドライアイにいい製品か確認してから使いましょう。水道水での洗眼は目の潤いを保つ涙を洗い流してしまう上に塩素による刺激も加わるのでおすすめできないといわれています。目を洗うのは異物が入ったときだけと覚えておいてください。

マイボーム腺の詰まり防止には、蒸しタオルで目を温めるのもいい方法です。40度くらいの蒸しタオルをまぶたの上に当てて5〜10分、目を休ませると詰まった脂が溶けて脂質の分泌がよくなるだけでなく、視力調整筋の緊張もとれ、疲れ目の改善にも役立ちます。

食事や生活の見直しでも改善しない目の乾燥は眼科の受診が基本。乾燥対策になり角膜を守ってくれる目薬の処方や、マイボーム腺の詰まりを取り除く治療もあります。

クロワッサン医療ライター

韮澤恵理 (にらさわえり)

健康と食のエディター、ライター。出版社勤務後に独立してフリーに。ダイエット、健康法、エクササイズ、料理などの実用書籍やムックを編集制作している。生活周りの情報収集が趣味。

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