からだ

脳は女性のほうが疲れやすい。 どうすれば?

疲れやすさは男女であきらかに違うことが研究からもわかっています。そのメカニズムを知って疲れない生活に切り替えるにはどうすればいいかの参考にしてください。精神科医で脳科学者の久賀谷亮さんに取材しました。
  • 文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子

女性が疲れやすいわけは……。

●ホルモンのバランス。
月経周期や更年期など、女性はホルモンのバランスが変わるため、その対応で疲れやすい。

●ライフスタイルが変わる。
結婚や出産、育児、家族のことなど、女性はライフスタイルが何度か変わることがあり、切り替えが大変。

●仕事と家庭と……。
仕事、家事、育児、介護と、女性はマルチタスクを要求されるシーンが多い。

●セロトニンが少ない。
幸せホルモンと呼ばれる脳内伝達物質のセロトニンの量が女性のほうが少ない。

圧倒的に女性のほうが疲れている。

疲れやすさには、性別による違いがあることをご存じですか? 実は女性のほうが男性より疲れやすいことがわかっています。以前にオランダで疲労に関する1万人規模の調査が行われました。その結果、圧倒的に女性のほうが疲れやすいとわかったのです。

特に子育て中の女性は疲れやすいというデータがあり、はっきりした原因はわからないのですが、育児は重労働でもあり、自分の意志だけでコントロールできないからだと考えられています。

でも、子育てが終わっても、子どもがいなくてもやはり女性のほうが疲れます。そこには上の4つの理由が関わっています。

一般に結婚や出産で大きく生活スタイルが変わるのは女性のほうが多く、その切り替えが負担になりやすいことが一つです。いまだに家事の負担も多く、常に2つ以上のことをこなしているからではないかと考えられています。

また、リタイア後の夫婦のあり方や、経済、健康について心配したり、考えたりするのも女性のほうが多いためかもしれません。

体の仕組みからわかる女性が疲れやすい理由。

女性には、医学や脳科学であきらかに疲労との関連がある身体的な特徴が挙げられます。

1つはホルモンのバランスで、閉経前は月経周期によるゆらぎで脳が疲れ、メンタルのアンバランスにもつながりがちです。

閉経の前後10年程度は、更年期という人生最大の変化の時期があり、この変化に追いつくことも、脳には大きな負担になってしまいます。

2つ目は脳内伝達物質のセロトニンの分泌量が男性より少ないことで、これはハーバード大学の研究で証明されています。セロトニンが足りないと、脳の活動が低下するとともに、睡眠の質も低くなります。これは女性が疲れやすい大きな要因と言えるでしょう。

うつも女性のほうが多いのですが、これもセロトニン不足によるものです。うつ病患者は健康な人に比べてあきらかに疲れやすいこともわかっています。うつ病だけではなく、プチうつと呼ばれる軽いうつ状態や、ストレスにさらされている状態でも同じです。

心の不調と体の不調は切り離せません。いずれも脳が感じていることです。体や心が疲れたなと思ったときは、実は脳疲労を解消することが大切です。

脳を休めるコツ

\過去や未来を考えない。/

昔あったことを振り返って後悔したり、先のことをあれこれ想定して心配するのをやめる。やり直せない過去と、どうなるかわからない未来を案じない。

\同時進行をやめる。/

2つの仕事を並行してこなしたり、家事をしながら夕食の準備のことを考えるなど、2つのことを同時進行しない。一つに集中し、次に切り替える。

\考えごとをやめる。/

くつろいでいるのに心配事を反芻(はんすう)したり、湯船の中でやるべきことを確認したりする「考え事ぐせ」を意識してやめ、今やっていることだけに心を向ける。

積極的に脳を休めるためには。

脳は意識して休ませないと休めない器官です。そのために女性が意識すべきことは、上の3つ。

1つ目は考えても変えられない過去や、わかりもしない未来のこと考えて脳を酷使しないことです。「こうすればよかった」などと、過去のことを思い出したり、「こんなことが起きたらどうしよう」と不安になって考えても、いいことは一つもありません。

2つ目は、やらなけばならないことはなるべく一つずつ片づけていくこと。同時進行を避け、次にやることを頭から追い払って今やっていることに集中します。女性は特に心がけたいことです。

3つ目は、とにかく考え事をしないこと。ぼんやりしているときのほうが考え事に陥りやすいので、ネガティブなスパイラルにはまったら、強制的に考えるのをやめて眠ってしまうほうが得策。

でもやっぱりあれこれ考えてしまう……働き続けて疲労する脳をしっかり休ませる呼吸法や瞑想法があります。

久賀谷 亮

監修

久賀谷 亮 さん (くがや・あきら)

医師、医学博士

医師、医学博士。日・米の医師免許を持つ。イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医として精神医療の現場に8年間従事。2010年、米国ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。「Lustman Award」(イェール大学精神医学関連の学術賞)、「NARSAD Young Investigator Grant」(神経生物学の優秀若手研究者向け賞)を2年連続で受賞。趣味はトライアスロン、トレイルランニング。『世界のエリートがやっている 最高の休息法』、『脳疲労が消える最高の休息法 CDブック』(共にダイヤモンド社)など著書多数。

『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。

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