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あちこちが不調なので、漢方薬局へ相談にいってみました。

なんだか調子が悪い。痛い、だるい、冷えるなど、さまざまな症状を和らげるのが得意な漢方。漢方薬局では、相談を重視すると聞きましたが、いったいどんなやりとりがあって、薬が選ばれるのでしょうか。大田垣晴子さんと訪ねてみました。

イラストレーション・大田垣晴子 撮影・岩本慶三

血流や自律神経を司る肝が弱っている?

漢方では、体の状態が舌に表れると考えられている。舌の形、色、舌の苔(舌苔(ぜったい))の色や厚みなどから、体の状態を推測する。

橋本さんのアドバイスで、大田垣さんが自分の舌をチェック。色はかなり赤く、やや紫がかってもいる。舌苔が左側に偏っていて右側ははがれていた。

「苔が多いのは、漢方では体内に余分な湿気、言い換えれば、老廃物が溜まって、それが疲れ、だるさをもたらしていると解釈できます。苔がはがれているのは逆に必要な潤いが足りていない状態です」(橋本さん)

最近、大田垣さんは右目の疲れが激しく、それも右側の舌苔のはがれが示唆しているという。

中国では古来、季節を春夏秋冬土用に分け、人間の体も各季節に関係する五臓から成るとしている。それが、肝、心、脾、肺、腎の五臓だ。

「これは西洋医学の臓器とは違い、体の状態を表していると思ってください。たとえば、肝は血流や自律神経、目の働きを司るとされています。その肝の働きが弱っていても、強すぎても不調が出やすくなります。漢方では、五臓の働きに過不足がない状態が理想です」(橋本さん)

大田垣さんから聞いた体調と、舌の状態から、橋本さんは、大田垣さんの肝が弱っているのではないかと推測した。

体質にあった漢方薬を選ぶために、いま抱えている不調だけではなく、生活習慣なども聞かれた。老廃物がうまく流れていないのではないかという見立てが。
体質にあった漢方薬を選ぶために、いま抱えている不調だけではなく、生活習慣なども聞かれた。老廃物がうまく流れていないのではないかという見立てが。

肝の調子を整えて、不調を解消する処方に。

「おなかに張りがあるんですね。イライラも気が張る状態ですから、これも『張る』症状です。これらは肝が弱ったときに表れるといわれています」

気になる舌苔のはがれの根本には“滞り”があるという。

「老廃物がうまく流れていないようです。老廃物が溜まっている要素としては毎日のお酒が疑われます。ストレス発散になってはいるのでしょうが……」

老廃物の滞りを、漢方では消化吸収や栄養と水分の運送を司る脾が弱っていると考える。

「いまの大田垣さんの体の状態を、肝と脾が弱っていると見ることができます」

漢方では体の状態を、気・血・水というアプローチからも見る。

「気」とは目に見えない生命エネルギー、「血」とは血液や栄養分、

「水」とはリンパ液など血液以外の体内の水分のこと。この気・血・水がうまく全身を巡っているのが正常な状態だ。

「気・血・水の観点からは、老廃物が溜まっているというのは、血が足りなくなって動かせずにいると見ます。『張り』との関連では、気の巡りが悪くなっているのかもしれません」

気になる不調を聞いては問い、を繰り返すうちに、大田垣さんの弱い部分と体質に当たりをつけ、どのような漢方薬を選べばいいのか、いくつか候補が出てきた。

「大田垣さんの体質は気が滞り血の巡りが悪い、気滞血瘀(きたいけつお)だと見ました。肝の調整をする漢方薬をメインにした処方で、疲労やイライラの改善を期待します」

そこで提案された漢方薬が、滞りを流す「逍遙顆粒」、体に溜まった湿気に由来する不調を改善する「勝湿顆粒」、飲む目薬といわれる「双料杞菊顆粒」など。2週間飲んでみると……。

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