からだ

パン・ウェイさんに教わる、おいしく食べて健康に生きるための知恵。

食べることは人生を楽しむこと。おいしく食べて、笑って、家族が健康であれば幸せ。
  • 撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり

「酸、甜、苦、辣、鹹」の五味を、バランスよく食べていれば健康に。

一日のうちでまず五臓に対応した五色を食べることを心がけ、一年のうちで五季五色を意識する。さらに五味を加えることでパワーがより強力になる。

「食材の味は『酸、甜、苦、辣、鹹』という五味に分けられます。これらの味を食べていれば自然に内臓が整えられます」

「酸」は酸味で、「気」や「血」のめぐりをよくし、肝臓や胆のう、目や自律神経によい。「甜」は甘味で、粘膜や消化器全体の働きをよくし、栄養の吸収が万全に行われる。「苦」は苦味や渋味で、精神活動を安定させ、心臓、舌、脳や血管によい。

「辣」は辛味で、全身の「気」や「水」の代謝をよくし、肺、鼻、呼吸器によい。「鹹」は塩味で、水分代謝を調節し、腎臓や耳、膀胱、骨によいとされる。

「この五味五色を意識することが健康のカギとなります。できれば一日3食の中でバランスよく摂るといいですね。健康の目安になっていた一日30品目を食べるよりも簡単ですよ」

「薬食同源」。食べるものすべてが薬。食生活の手抜きは必ずツケが回ってくる。

中国の人々にとって、口に入るものすべてが薬になるという「薬食同源」の考え方は、日々の生活に根づいている。

「私が子どもの頃、学校から帰って遊びに行く前に、おばあちゃんはいつも蜂蜜を一口舐めさせました。蜂蜜には強い殺菌作用があるので、菌の侵入を防ぐためでした。

風邪の季節になると、学校に生徒たちが菊の花茶を入れた水筒を持ってきて飲んでいました。菊の花には殺菌作用や消炎作用があるので、風邪が流行ると欠かせないんですよ」

にんにくも殺菌力が高いので、中国ではインフルエンザが流行っているときは大いに食べ、ちょっと危ないものを食べたときは生でガリガリかじるという。

「生で食べたときの匂い消しには、乾燥したお茶の葉をパリパリ噛むんです。茶葉には脱臭効果がありますから。私は少し温めた果汁100%のリンゴジュースを飲むようにしています。胃の中で匂いを抑えてくれて、粘膜も保護してくれるんですよ」

デトックス効果がある胡麻油。加熱調理するなら白胡麻油を。

日本では中華の炒めものをするときなど、焙煎した褐色の胡麻油を使うことが多い。

「それをしちゃダメなんです。味が胡麻油の味になってしまって、食材の味がわからなくなってしまいます。胡麻を焙煎した胡麻油は香ばしい風味を生かすことが大切だから、料理の仕上げに垂らしたり、和えものやドレッシングに使うといいんです。

炒めたり、加熱するときは白胡麻油を使ってください。白胡麻を焙煎せずに搾っているので、あっさりとしたクセのない味で、香りもほとんどありませんが、コクとうま味があります。胡麻油は用途によって使い分けることが大切ですね」

さらに胡麻油は体内にたまった老廃物を排出するデトックス効果がある。抗酸化作用のあるゴマグリナン、老化を予防して肌コンディションを整えるオレイン酸、必須脂肪酸のリノール酸などを豊富に含み、健康効果はバツグンに高いので、賢く利用したい。

薬効があり、一年中手に入るクコの実は、赤い食材のスーパーフードで女性の味方。

「5色を食べようとして意外に困るのが赤い色。夏のトマトはよくても、他の季節で使えるものがあまりないんです。それで、常備しておくといいのが、ほんのり甘いクコの実です。よく杏仁豆腐の上にちょこんと1粒のっていますよね」

クコの実は中国では古くから副作用の少ない「上品薬」として使われ、気血を補い、肝と腎を高める作用がある。目の働きをよくし、疲れ目や視力低下、ドライアイなどにも薬効が。

「加齢による足腰のだるさ、白髪や不眠の改善など、アンチエイジング効果も期待できるんです。ことに女性の体を守ってくれるといわれていて、ビタミンやミネラルも豊富です。スーパーの中華材料コーナーで手に入ります。空腹のときに食べたり、少し水に戻して料理に使うなど、利用しやすいですよ」

パンさんはクコの実のほかに、ドライフルーツとナッツを常備して、天然のサプリメントとして食べているそう。

恩人は北京の「おばあちゃん」。日々の体調を整える、薬膳の家庭料理を教えてくれた師匠。

北京で生まれ育ったパン・ウェイさんの薬膳料理は「おばあちゃん」の存在を抜きには語れない。

「血のつながりはなかったのですが、両親ともに働いていて、私と弟の面倒を見てくれたのです。漢方医を夫に持ち、自身も看護婦と助産師の免許を持っていたので、漢方や薬膳の知識がとても豊富でした」

そのおばあさんと一緒に台所に立ったのが、パンさんの料理家としての原点となった。

「でも日本に留学してからは不規則な食生活を続け、仕事で北京に滞在したときにあまりの具合の悪さに倒れてしまったんです。そのとき『20年もかけてその体を作ってあげたのに、たった2年半で壊してしまうなんて』とおばあちゃんに嘆かれました」

それから毎日仕事場に持ってきてくれたおばあさんのお弁当でパンさんは健康を取り戻すことができたのだった。

「食べることは人生を楽しむこと。日々の食事が明日の自分を作るとおばあちゃんは教えてくれました。それを伝えたいです」

パン・ウェイ

お話を伺ったのは

パン・ウェイ さん

料理研究家

中国・北京生まれ。季節と体をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、現在は東京・代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。著書に『毎日からだを調える中華スープ』(誠文堂新光社)など。

『Dr.クロワッサン 不調が消える、ふだん漢方』(2020年1月28日発行)より。

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