夏の冷えとほてりの原因。「腸熱こもり症」を知っていますか?
撮影・山本ヤスノリ イラストレーション・黒猫まな子
「腸熱こもり症」への対策と養生。
夏の起床時間は朝5時、夜は11時までに就寝。
東洋医学では陰陽のリズムに合わせた生活をすることがすべての基本となる。
太陽の出ている明るい時間帯は陽、夜7時以降から深夜3時までの暗い時間帯は陰。陽では身体をよく動かし、陰では身体をなるべく休ませる。
「夏は陽気を養うために早めに起きる習慣を。朝5時に起きて、一日のパワーの源を作る朝食は消化吸収が活発な9時までに食べる。夜は理想的には8時まで、遅くとも9時までに夕食を済ませて11時には床につく。夜の11時以降は血を養う時間帯なのでしっかり睡眠をとりましょう」
陰陽リズムに従い、腸にこもった熱を発散させる生活を。
夏の旬、「苦い」と「赤い」を食べる。
古代中国の五行説に季節と五臓六腑を当てはめると、夏は血を全身に巡らせて精神を司る「心」の季節。そこで食養生では「心」を養う食物を口にすることがおすすめ。
「五味でいうと苦いもの、五色でいうと赤いものに、心を養う作用があります。苦いものはゴーヤやパセリ、セロリ。赤いものはトマトやパプリカなど。また、8月以降の夏の後半は長夏といって湿気が絡むため、冷えが生じやすくなります。利尿効果のある緑豆や冬瓜などを食べて、〈湿〉を取り除くことも重要です」
旬の夏野菜を積極的に食卓に取り入れて、季節に合わせたバランスのよい食生活を。
「腸熱」が 生まれる食べ方をやめる。
必要な栄養を摂るだけではなく、不要な食べ物にも敏感に。腸熱をもたらしやすい食べ物をできるだけ避けることも、食養生には欠かせない。
「腸熱をもたらしやすい食べ物の筆頭、炭水化物などの糖質はエネルギーになりやすいもの。ジュースやアイスクリーム、果物などの甘い食べ物を頻繁に口にしたり、パンやせんべいなどでお腹を満たすのはできるだけ避けましょう。特に、夜7時以降の陰の時間帯には口にしないこと。また、胃腸を冷やして消化吸収能力を低下させる生ものもこの時間帯にはおすすめできません」
暑さで内臓が疲れやすい夏場は、夕食を少なめにして胃腸を休ませる。特に減らしたいのは熱を生む主食の炭水化物で、夜8時までには食べ終わることを心がけたい。ビールやワインなど熱を生じやすい醸造酒も控えめに。
正しい水分のとり方と、熱中症対策。
腸に熱がこもると体力が消耗するのでお腹が空く。過食でさらに熱がこもって身体が乾燥すると、無意識に冷たい飲み物に手が伸びる。
「腸熱こもり症で一日に3Lも4Lも水を飲んでいる人は少なくありませんが、身体は冷やされないようまた熱を作るので逆効果。夏の飲み物の適正量は体重1kg当たり25ml程度。体重50kgなら1250mlです。また、冷たい飲み物で体内の熱を閉じ込めてから暑い屋外に出ると、熱中症になりやすい。外出前にジュースなどを口にするのは禁物」
外出前、さらに夜7時以降の陰の時間は、冷たい飲み物のガブ飲みに要注意。
冷房による寒暖差疲労に陥らないために。
屋外では猛暑にさらされ、屋内や電車などではきつすぎる冷房にさらされる。屋内外の温度差が10度以上になることも珍しくない。その繰り返しで体温調節を司る自律神経のバランスが乱れることも。
「常温に置いてあるガラスのコップは熱湯や冷たい水に浸けても大丈夫です。でも氷水に浸けてあるコップに熱湯を注ぐと割れてしまいます。これと同じように、冷房を強くきかせた環境から暑い屋外に出ると身体は対応できません。外出先の冷房対策として、羽織るものを1枚持って出かける、夜寝るときには居間の冷房をかけて、扇風機で寝室に涼しい空気を送るなどの工夫を」
身体が冷えたと感じたらこのツボを押す。
養生に気を配っていても、きつい冷房環境や暑さによるストレスからの過飲で身体が冷えてしまうことも少なくない。そんなときの対策として覚えておきたいのがツボ刺激。
「身体が冷えたと感じたとき、よく効くのが消化器を活性化する〈内関〉や〈外関〉というツボ。生命力の源である腎の気を整える〈湧泉〉というツボも冷えには有効です。指で押したときにズーンと響くような感覚があれば、そこがツボ。気持ちいいと感じる強さでそれぞれ15秒程度を、繰り返し押してみてください」
ツボ刺激によって神経がリラックスし、眠りにつきやすくなるという効果もあり。
●湧泉
足の裏の上から3分の1、足でグーを作ったときに一番凹む部分。
●内関
手首の内側のしわの中央から、指3本分肘側に下がったところ。
●外関
手の甲側の手首の中央から、指3本分肘側に下がったところ。
『クロワッサン』1023号より