自律神経のメカニズムを西洋医学・東洋医学の視点で徹底解説。
今回は西洋医学(久手堅 司さん)、東洋医学(木村容子さん)の2つの視点から、医師が徹底解説。臨床の結果を踏まえた、私たちにもできる自律神経の整え方も伝授します。
イラストレーション・山中玲奈 文・板倉みきこ
【東洋医学】
木村容子(きむら・ようこ)さん
東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長。2008年より日本初の「漢方養生ドック」を開始。著書に『ストレス不調を自分でスッキリ解消する本』(さくら舎)など。
Q.自律神経とは?
A.五臓の“肝”がその働きを担っている。
東洋医学には、人体を構成し、生命を維持するために欠かせない3つの要素がある。全身のエネルギー源の“気(き)”、全身を巡り栄養を運ぶ“血(けつ)”、血以外の体液で、体を潤す働きをする“水(すい)”だ。「病は気から」というように、“気”はストレスの影響で巡りが滞ったり(気滞(きたい))、不足する(気虚(ききょ))ことなどがあり、様々な心身不調の原因になる。
「全身の“気”をコントロールしているのが、臓器を5つに分類したうちの一つ、“肝”です。五臓(肝、心、脾、肺、腎)は、解剖学的な臓器に、機能も含めた分類。“肝”は肝臓の働きや、血を貯蔵し、全身に送る血量の制御をする役割、そして自律神経の働きも担っています」(東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長・木村容子さん)
五臓は互いに関わり合い、アクセル(相生(そうしょう))とブレーキ(相克(そうこく))の役割をすることでバランスを取っている。
「ストレスで『肝』が影響を受けると、自律神経や“気”の流れが乱れます。また『肝』から『心』へのアクセルが働かないため、動悸や不眠などの症状が現れたり、消化吸収を司る『脾』へのブレーキが利かず、過食や逆に食欲不振などが起こります。『肝』は強すぎても弱すぎても不調をきたすので、バランスを取ることが大事。自律神経の働きはバランスが重要とする、西洋医学と共通する考えです」
Q.バランスを崩す原因は?
A.怒りの感情の処し方にも原因あり。
東洋医学では、心と体は一体である「心身一如」という考え方がある。
「心身の歪みを生む原因は3つ。気温、湿度など体の外からくる環境要因の“外因”、怒り、憂い、恐れ、驚き、喜びなどの感情の変化がもたらす“内因”、生活習慣などの“不内外因”です」
“外因”や“不内外因”は、西洋医学にも通ずる考え方だが、特徴的なのは、各五臓に関わる感情が過度になると、該当する臓器に悪影響が及ぶとする“内因”の捉え方だ。自律神経をコントロールする“肝”が司る感情は“怒り”。
「怒りの感情の度がすぎると“肝”を傷つけ、その結果“気”が下から上に上昇し、慢性的にイライラを生じさせることになると考えます。ただ、怒りを抑えすぎること自体がストレスになり、かえって別の不調が出てくることもあります。怒りの感情の処し方が、自律神経を乱れさせる原因になっていることもあるのだと知ってほしいです」
Q.乱れやすい人の傾向は?
A.更年期は自律神経の乱れに影響大。
自律神経系の働きに、とても大きな影響を及ぼすのが更年期。
「自律神経が乱れることで起こる、冷えやのぼせ、イライラ、倦怠感などの症状は、更年期の女性にも現れる変化。そこに、介護疲れや仕事などのストレスが重なり、自律神経系の働きを自ら乱すことで、よけい症状をひどくするのです。更年期は、些細な刺激で症状が出やすい、不安定な時期です」
[チェック!]
□ やる気がおきない
□ 朝、なかなか起きられない
□ 人に会ったり、外出が面倒に感じる
□ 目が疲れやすい、しょぼしょぼする
□ 訳もなくイライラしやすい
□ 顔が赤くなり頭痛がある
□ 今まで面白いと感じていたことが感じられなくなった
□ 月経が不順、月経痛がひどい
『クロワッサン』1022号より