骨粗鬆症や骨折などを未然に防ぐための方策、磯野貴理子さんが専門医に聞きました。
撮影・岩本慶三 スタイリング・繁田美千穂 ヘア&メイク・anna 文・一澤ひらり
磯野さんが骨密度検査を受けてみました。
「骨力アップには、牛乳を飲む、日光浴、かかと落としですね。」磯野さん
加藤 さきほど磯野さんの骨密度を測りましたので測定結果をお伝えします。
磯野 うわー、ドキドキしちゃう。
加藤 20~44歳の若年成人の骨密度を100%として、80%以上だと正常、70~79%は骨量減少、70%未満は骨粗鬆症になります。磯野さんの腰椎は77%、大腿骨は79%。どちらも80%に達していなくて骨量が減少しています。骨密度が低下している同年代と比較すると同じぐらいの値です。
磯野 覚悟はしていましたが、やっぱり骨量は減っているんですね。なんとか、いまのうちに抑えたいです。
加藤 これ以上骨が減るのを抑え、できるだけ骨量を維持することが大切です。骨の強化は食生活と運動でできますから。
磯野 やります! これからは骨活に励まなくちゃ。食事だとカルシウムをたくさん摂ればいいんでしょうか。
加藤 たしかに日本人はカルシウムが不足しています。推奨量は1日に800mgですが、普段の食事でどのくらい摂っているか、カルシウム自己チェック表で採点してみてください。
磯野 38点満点中13.5点、「1日600mgしかカルシウムが摂れていません」ですって。もっとカルシウムの入った食材を食べなくちゃダメですね。
加藤 牛乳やヨーグルトなどの乳製品ならカルシウムの吸収率が高いし、手軽です。さらにカルシウムの吸収を高め、骨を守る栄養素を摂ることも大切です。骨にカルシウムを定着させるビタミンD、骨を作るのを助けるビタミンKを一緒に摂ると効果倍増ですよ。
磯野 ふだんあまり耳にしたことのないビタミンですよね。
加藤 ビタミンDは魚やきのこなどに含まれますが、15分ほど日光浴をすれば紫外線に反応して体内で生成されます。ただ、日焼けを気にして過剰なほど紫外線ケアをしている女性は不足しやすくなってしまいますね。
磯野 ビタミンDが日光浴するだけで補給できるなら大助かり。近くの公園まで毎日散歩します。
加藤 骨の成分の70%はカルシウム、20%はたんぱく質のコラーゲンです。骨は鉄筋コンクリートにたとえられますが、カルシウムがセメントで、コラーゲンは鉄筋だと考えてください。骨組みがコラーゲンなので、良質なたんぱく質を摂ることも必須です。
磯野 骨ってカルシウムのかたまりだと思ってました。たんぱく質や骨づくりをサポートする食材もちゃんと摂らないと丈夫な骨にはならないんですね。
加藤 私は毎朝、「美骨スムージー」と呼んでいるものを飲んでいます。ヨーグルトに小松菜とわかめ、納豆、ごま、バナナを入れて作るんです。ヨーグルトや小松菜はカルシウム豊富だし、納豆はビタミンKの宝庫です。
磯野 えーっ、納豆をスムージーに入れちゃうんですか? 衝撃的すぎます。においとか大丈夫ですか?
加藤 思いのほか気になりません(笑)。意外にサラッとしていて、朝多めに作ってクリニックでも飲んでいますよ。
磯野さんの骨密度測定結果。
(A)自分の骨密度がグラフで一目瞭然。
グラフの縦軸が骨密度、横軸が年齢。自分の年齢のところに+印で骨密度が示される。青は安心ゾーン、黄は注意ゾーン、赤は骨密度が低下した危険ゾーン。
(B)骨密度
骨に含まれるミネラル(カルシウムほか)の量です。
(C)若い人(20〜44歳)と比較した値
80%以上は心配ありません。
70〜79%は骨密度がやや低下しています。食事・運動などの生活に気をつけましょう。
70%未満は一度、精密検査を受ける必要があります。
(D)同年代と比較した値
骨密度は年齢とともに少なくなっていきますが、同年代の骨密度を100%とした場合の比較です。
骨は荷重をかけると増えるもの。「かかと落とし」は最適の運動。
磯野 骨力アップにはやっぱり鍛えなくちゃダメでしょうか?
加藤 これが意外と簡単にできるんです。「骨に刺激を与える」ことが一番のポイント。骨に負荷がかかると、破骨細胞によって古い骨が壊され、それによって骨芽細胞が新しい骨を作り、骨形成が促進されます。ミニジャンプとかすごくいいんですよ。
磯野 私、膝がちょっと痛いんです。飛んだり跳ねたりはちょっと……。
加藤 無理にやって膝や腰に負担がかかるのはよくないですね。では、「かかと落とし」がオススメです。つま先立ちになってストンとかかとを床に落とす。体重を利用して骨密度を高める、最も簡単で効果的な方法です。
磯野 えっ、それだけ! すごく簡単。何回ぐらいやったらいいんですか?
加藤 1日50回ぐらい。それで充分効果が期待できます。
磯野 信号待ちとか、ちょっとした隙間時間でできますね。かかとを刺激するだけで骨密度がアップするなんて、筋トレが苦手な私にはうれしい限り。
加藤 頑健な宇宙飛行士でも数カ月間宇宙ステーションにいると骨がもろくなってしまうのは有名な話です。無重力状態の宇宙空間では、骨に刺激が加わらず、骨からカルシウムが溶け出して骨量が一気に減ってしまうんです。
磯野 地球の重力って骨にはとても重要なんですね。いかに骨に刺激が大切か、わかってきました。
加藤 駅の階段を下りるだけでもいいんです。私は通勤のとき、地下鉄の駅で5階分ぐらいの階段を毎日上り下りしています。階段上るのは筋トレ、下りるのは骨トレになりますから、エスカレーターを使うのはもったいなくて。
磯野 階段を下りるときに骨が刺激されるんですね。「階段上るのは筋トレ、下りるのは骨トレ」。キャッチフレーズみたいで覚えやすいです。
加藤 骨代謝が正常に行われると、骨細胞から「オステオカルシン」が分泌されます。これは骨を丈夫にするだけではなく、認知機能を改善して、動脈硬化を予防、血糖値の上昇抑制なども期待できるので、「若返りホルモン」って言われているんですよ。
磯野 なんですって! 全身を若々しく健康に保つには骨ってすごく大事なんですね。自分なりにコツコツ努力して骨を強くしたいです。しばらく飲んでいなかった牛乳を買って帰ります!
「『骨密度検査・栄養・運動』この3つで骨を強くしましょう。」加藤さん
【カルシウム自己チェック表】普段の食事でどのくらい食べていますか?
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【判定】点数を合計してください。あなたのカルシウム度をチェック!
磯野貴理子(いその・きりこ)さん●タレント。1964年、三重県生まれ。テレビのバラエティ番組やドラマ、舞台で活躍。現在、『はやく起きた朝は…』(フジテレビ系)、
『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などに出演中。
加藤朋子(かとう・ともこ)さん●とも内科クリニック院長。山梨大学卒業。医学博士。骨粗鬆症認定医。糖尿病や骨の治療を続ける中で健康長寿には骨が大切と、糖尿病と骨粗鬆症を専門に東京・世田谷区に「とも内科クリニック」を開院。
『クロワッサン』1016号より
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