オイルの摂り方を変えれば、体の中から元気になる、若返る。
撮影・岩本慶三 文・越川典子
吟味したオリーブオイルを摂っているから
私は大丈夫と思い込んでいたのよね。(溝口恵子さん)
それが今では、週に4、5回は魚料理ですよね。
恵子さんの肌も、以前より調子がよく見えます。(地曳直子さん)
地曳さんは、母親の糖尿病をきっかけに分子栄養学を学び、糖尿病のほかにも、アレルギーやがん、認知症、うつ病などにオイル(脂質)や脂質代謝が関わっていることを知って驚いた。
「どんなオイルを摂っているかも大事ですが、何より『体内脂質』のバランスこそが重要だとわかったんです」
誰もが数値で体内脂質バランスを知って、健康に役立てるようにと、地曳さんは自己採血の「脂肪酸検査」を日本で初めて一般向けに導入した。
友人の溝口恵子さんが、その検査を初めて受けて、その結果に衝撃を受けたというのだが……。
溝口恵子さん(以下、溝口) カラダの中の脂質を調べる検査というので興味津々。健康診断のつもりで受けてみたら、1カ月後に出た結果にびっくり。「動脈硬化のリスクが高く、心疾患、脳梗塞などが起きやすい状態。ほかにもカラダが様々な炎症を起こしやすい数値」と言われてしまって。
地曳直子さん(以下、地曳) そう、私も目を疑いました。まさか恵子さんが、と。オメガ3系の脂質はほとんどなく、一般の人は多すぎるほど摂っているオメガ6すら少ない。
溝口 バランスが悪かったのですね。
地曳 当時の食生活は……。
溝口 もともと肉は苦手で、魚もあまり食べていませんでした。
地曳 野菜は食べていたけれど。
溝口 オイルも、イタリアの生産者にも会いに行って出合った、自然栽培の最高のオリーブオイル。このオイルと自然栽培の野菜で、最高の食事をしていると自負していました。でも、直子さん、オリーブオイルだけ摂っていてはダメなのですね?
地曳 そう。オリーブオイルはオメガ9系オイルといって、実は体内で作れるので、たくさん摂る必要はありません。オリーブオイルのオレイン酸は腸の蠕動(ぜんどう)を促してくれるし、フィトケミカルの抗炎症・抗酸化作用を期待して、適量を摂るのはとてもいいんです。
オメガ3系オイルが脳、目、神経などを守っている。
溝口 では、なぜオメガ3系オイルがそんなに必要なのか、あらためて教えてくれますか?
地曳 オメガ3系も6系も、どちらも体内では作れない必須脂肪酸だから、まず食事で摂る必要があります。
溝口 はい。
地曳 オメガ3系オイルに豊富なα‐リノレン酸は一部がEPA(エイコサペンタエン酸)に変わります。大豆油やコーン油などのオメガ6系オイルは、リノール酸からAA(アラキドン酸)に変わって、それぞれから「脂質メディエーター」という、カラダを調整する物質が作られるんですね。
溝口 「メディエーター」とは「仲介者」って意味ね?
地曳 そのとおり! EPAは炎症を抑えてくれるメディエーターを作り、逆にAAは炎症を促進するメディエーターを作ってしまうことがわかっているんです。
溝口 どちらも必要なのに。
地曳 そうなんです。オメガ3系も6系も体内では作ることができない必須脂肪酸ですから、摂り方で健康になったり、病気になったり。肝心なのは、「バランス」で、3と6とを「1:2~4」の割合で摂るのが理想(全ページ表参照)。なぜなら、3系、6系と同じ代謝酵素を使っているので、6系が多すぎると、いくらオメガ3系オイルを摂っても、体内で代謝されにくいんです。
溝口 なるほど。そのバランスが崩れると、病気のリスクが高まってしまうわけなのね。
地曳 九州大学の久山町研究によると、心血管系の疾患では、EPAの濃度が高い人は低い人に比べて、死亡率が3分の1。がんの死亡率も、約2分の1とわかっているんです。
溝口 驚いてしまいますね。
地曳 ほかにも糖尿病や脳梗塞、目の網膜の病気、うつ病などにも影響があるんです。
溝口 その比率が、直子さんの検査でいう、EPA/AA比なんですね。
地曳 そうなんです。恵子さんは、半年後に再検査を受けてくれて、その結果は見事! すごく改善されていました(左表参照)。私がいちばん驚いているのは、バランスがよくなると、ほとんどの人が高血圧や脂質異常症が改善されることなんです。
溝口 カラダ全体に作用しているわけですね? 改善するまでには、どのくらい期間が必要?
地曳 血液検査で改善が見られるのは、3~4カ月くらいですね。
溝口 中高年になると、急にコレステロール値が高くなったり、脂質異常症になったり。私の知っている人でも、それで薬を飲み始めています。
地曳 更年期世代から急増しますね。
溝口 私の場合、直子さんから「しばらくは毎日、青魚を食べるように」と言われましたね。鯖、イワシ、アジ、シシャモ、しらす……毎日おいしく食べていました(笑)。
地曳 魚の脂は、オメガ3系オイルですからね。EPAも、脳を守るDHA(ドコサヘキサエン酸)も、そのまま含まれています。ですから、脂ののった青背の魚を食べるのが、改善のいちばんの近道なんです。
改善例・溝口恵子さんの場合
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