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治療だとしても、一つのホルモンだけ補充してはバランスが崩れませんか。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 治療だとしても、一つの ホルモンだけ補充してはバランスが崩れませんか。

月経の間隔が空いて、そろそろ閉経か……と思っています。この連載は毎回クロワッサンオンラインで読んでいて、女性ホルモンがなくなるから補充するーーそのこと自体は納得がいくので、いま婦人科を探しているところです。野末先生にお聞きしたいのは、そもそも全身が衰えてきているのに、女性ホルモンだけを補充することでカラダ全体のバランスを崩してしまうことはないのでしょうか。教えてください。(N・Jさん 49歳 派遣社員)

A. なくなったものを 補充するので、かえって バランスを取り戻せます。

N・Jさんのおっしゃることは正しいです。女性ホルモンは卵巣から分泌されますが、それも視床下部から下垂体を経て、卵巣に情報が届いているのです。ただ、このラインが1つだけではなく、副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンとも影響し合っていることがわかっています。性ホルモンだけではありません。全身のホルモンは100種類以上あるといわれ、カラダの各器官を結ぶ連絡役として、それぞれの働きを調整しています。たとえば、すい臓から分泌されるインスリンや胃腸から分泌される複数のホルモンは代謝・消化のホルモンですね。これらのホルモンと、エストロゲンなどの女性ホルモンが違う点は、一部の内臓に働くのではなく、皮膚や血管、脳、骨、内臓、筋肉や筋膜、腸など、カラダ中のあらゆるところにある受容体(レセプター)に働きかけ、女性のカラダを守っている点です。

分泌量が減っても生死を左右することはありませんが、全身に症状が現れ、女性のQOL(生活の質)を大きく落とす理由です。そして、日常生活に支障をきたす場合、「更年期障害」と診断されるわけです。

減少した分を補うだけのホルモン補充療法(HRT)は〝根本治療〟。むしろ全身のバランスを取り戻すことになります。N・Jさん、ご理解いただけましたでしょうか。そもそも補充する女性ホルモン量は微量で、低用量ピルのさらに5分の1程度です。治療開始した場合も、投薬1カ月後に医師と体調をチェックし、必要ならばホルモン剤や投薬法を替えたり、量を調整したりできます。

互いに影響し合う性腺機能

参考資料:『すてきな人のイキイキ更年期』(野末悦子著)

女性ホルモンは、脳からの指令で卵巣から分泌される。分泌量をフィードバックする働きもまた卵巣にはある。その相互作用を示したのが上の図。

女性ホルモンとライフサイクルの変化

参考資料:同上

女性ホルモンが減ると、分泌を促す性腺刺激ホルモンが放出される。閉経の前後で、女性に大きな変化が起きていることがわかる。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

ホルモン療法は、量や種類を調整するのが基本。
(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1046号より

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