からだ

ホルモン補充療法を再開すべきかいま迷っています。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. ホルモン補充療法を再開すべきかいま迷っています。

閉経は52歳。ホルモン補充療法(HRT)を始めて1年近くたったころ、新型コロナウイルスの感染が広がり始めました。なかなか病院に行く気になれず、通院をやめてしまい、それっきり……。治療をやめてまた更年期症状がぶり返していて、いま仕事が終わると起きていられないほど疲れてしまいます。週末は、寝込むことも増えて、やはり治療を続けたほうがいいのか悩んでいます。(S・Dさん 54歳 会社員)

A.治療再開してから、カラダがどう変化するか観察しましょうね。

コロナ禍で、どの診療科でも受診控えが起きていますね。通院が怖いという気持ちは理解できますが、それによって病気や症状が悪化したら本末転倒です。いまは、病院でも感染対策を最大限するなど努力をしています。必要な治療は中断しないでいただきたいと切に思います。

S・Dさんは、HRTをしていたころは、きっと体調がよかったのですね。エストロゲンを補充していたのに、突然、中断してしまったわけですから、更年期症状がぶり返すのは当然の話です。この連載でいつもお伝えしているように、つらい状況を我慢する必要はありません。

再開、私はおすすめします。

その際、HRTをする目的を、あらためて自覚しておきましょう。

・更年期障害の治療のため
・病気の予防のため
・骨密度の維持のため

など、なぜ治療をするか認識しているかどうかで、治療効果は確実に変わってくるからです。

さて、HRTはいつ中断しても、いつ再開しても自由ですが、心得ていただきたいことがあります。

(1)HRTは、閉経前後で開始すれば、副作用などのデメリットよりメリットが大きく上回るということ。S・Dさんは、せっかく閉経後すぐに治療をなさったのですから、継続したほうがよいのです。

(2)中断するときは、いきなりやめないこと。なぜかというと、いきなり断薬すると、更年期症状が重く感じることがあるからです。必ずかかりつけの医師と相談して決めてください。やめるにしろ、少しずつ薬の量を減らすなどしたほうが体調管理はうまくいくはずです。

HRTに関する相談内容

出典:NPO法人 女性の健康とメノポーズ協会『ホルモン補充療法(HRT)がよくわかるQ&Aハンドブック2019』/2017年9〜10月 相談件数:347件 平均年齢:53.9歳 居住地域:1都1道2府18県

女性の健康とメノポーズ協会の「女性の健康電話相談」から。「HRTを再開したい」人が8%もいる。中断したが、再び体調悪化があったからと推察できる。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

HRTをする目的を定期的に見直そう。(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1042号より

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