すべてのカギを握る存在、“女性ホルモン”の基礎知識。【後編】
産婦人科医の対馬ルリ子さんと、美容家の吉川千明さんにお話を伺いました。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・山田久美子 イラストレーション・イオクサツキ 文・小沢緑子
女性ホルモン剤は使うメリットが多い。
吉川 低用量ピルは一度、様子をみようと休止した時期があったのですが、そうしたら途端に調子が悪くなって慌てて再開。閉経後はホルモン補充療法にすぐに切り替えました。体調もいいですし、何より気分が明るくなりますね。
対馬 ホルモン補充療法を行うと、最初の診察時はつらそうだった人も、「体も心も楽になりました」と顔つきが明るくなることが多いですよ。更年期以降、女性は骨が弱くなるので、女性ホルモンを補うと骨折を防げる率も高くなります。使うメリットは多いので、50代から始めるのがおすすめですね。
吉川 ホルモン補充療法で使う女性ホルモン剤には種類がいろいろありますよね。
対馬 飲み薬、貼り薬、塗り薬の3種類があり、エストロゲン剤とプロゲステロン剤の両方を補います。
吉川 私は皮膚に塗るタイプのエストロゲン剤と飲み薬のプロゲステロン剤を処方してもらっています。
対馬 女性ホルモン剤の種類や組み合わせは、患者さんの状態でさまざま。うちのクリニックの場合は、まず問診をして、SMI(簡略更年期指数)で更年期症状の重症度、SRQ-D(ストレス指数)もチェックし、血中ホルモン値なども測って処方します。
吉川 私は女性ホルモン剤と併せて、時々漢方薬も飲んでいます。
対馬 漢方薬は、ホルモン補充療法と相性がいいですよ。同じ症状でもその人の体質や気質を判断し、たとえば自律神経の症状があれば加味逍遙散(かみしょうようさん)、更年期に起こりやすい喉のつまりには半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など、その人に合ったものを使います。
女性ホルモン剤と漢方薬の使い方
体と心をトータルで診てもらうことが大事。
吉川 更年期の症状は我慢してしまう人もいますが、具合が悪いままやり過ごすより、私は女性ホルモン剤の助けを借りて快適に明るく過ごしたほうがいいと思っています。
対馬 まさにそれが生活の質を上げていこうという「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」の考え方。医療を受けるときも「我慢しない」ことは大切なことですよ。
吉川 私は女性外来で女性ホルモン剤の治療を始めましたが、その前は体調が悪くて病院に行っても「異常はありません」と言われて、いろいろな科を渡り歩いた経験があるんです。女性の不調は体と心の両面にあらわれやすいと思うので、どちらも診てくれる女性外来に行ってよかったと思っています。
対馬 今の日本の医療は臓器別で診ることが中心で、体も心もトータルで診ることが大切な女性医療の分野はまだまだ遅れているんです。
吉川 たとえば更年期に不眠で悩んでいても、ホルモン補充療法を受けると改善することもある。「病院に行くほどではないけれど、何か体がおかしい」と思っていたら、女性外来や婦人科を一度訪ねてみてほしいと思いますよ。
対馬 フランスの場合、女性は10代から婦人科のかかりつけ医をもつことが定められています。日本の女性も症状がないときから女性外来や婦人科で検診を受けて新しい情報を得たり、女性ホルモンのほかにも何か変わりはないかチェックする習慣を、ぜひつけてほしいですね。
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