なんと言っても見所は、森繁久彌と淡島千景のゴールデンカップルぶり。柄はでかいが稚気の抜けきらないダメンズ森繁と、姐さん風の色香が漂う、気丈に尽くす女・淡島千景は、まるで’90年代のトム・ハンクスとメグ・ライアンのようにお似合い! 掛け合いも息ぴったりで、二人が同じ画面に収まっているだけでニヤニヤしてしまいます。
印象的な題名が生み出す効果か、寄り添って生きる理想の夫婦像を思わせるこの組み合わせ。実は内縁関係で、しかも蝶子の方が柳吉にぞっこんでなので、どう考えても分が悪い。より愛している方がよりつらいのは恋愛の宿命といえ、苦しむのも振り回されるのも女の役目で、いま観ると「こうあってほしい」女像を描いた男の映画だなぁと。
その夢の女をリアルに体現する淡島千景がはまり役。目鼻立ちが大きく陽気で、アプレ(戦後派)第1号として銀幕に新風を吹き込んだ女優でありながら、和装も日本髪も本当によく似合う。そして気っ風のよさゆえに割を食う女を演じると天下一品であります。
それはそうと、森繁の、なんともいえないチャーミングさは、ちょっとすごいです。