政治家や官僚は公の場では “本当のこと” を言いません。発言は情報として価値が低い。では何を見るか。具体的な法案や法律の条文です。法律は “権力の言語” 。昔の記者はこれを読み解いて報じていました」
それには公開情報のチェックを怠らず、足を使って人を訪ね、疑問をぶつける必要がある。
「自分の取材経験を話すと福島の原発事故のあと、従来の避難体制ではダメだということで新しい体制が作られ、条文化されました。原子力規制委員会が公開している、非常にわかりにくい議論の本質はその条文に結実しています。原発の半径30km以内の住民は、地上に置かれたモニタリングポストの線量が一定量を超えたら屋内に避難せよと書いてある。変だと思って原子力規制庁を訪ねて、 “これだと住民が被曝しますよね?” と聞いたら “そのとおりです。住民の被曝は容認する避難体制に変えました” と答えた。これは疑問を抱いて質問しないと得られない情報です」