「周りを見ても、多くの人が、吉祥寺や自由が丘に代表される郊外の人気の街以外を、住む場所に選び始めている。その背景にある、いわゆる〝住みたい街ランキング〟ではない新しい住む場所選びのあり方や、いまどきの引っ越し理由を探ったのがこの本です」
東京の中央及びちょっと東の発展とともに、この都市の住む場所事情はかつての“西高東低”(人気も家賃も西が高い)から“都心回帰”に変わりつつある、との分析から本書はスタートする。
「フィールドワークと称して東京を飲み歩いていると、都心に夜遊びできる飲食店が増えたな、とか、都心の住宅街を中心にバルブームが広がっているとか、小さな変化に気づくんです。〝都心回帰〟に着目したのはそこから。食をきっかけに都市自体が変わってきている、という感覚が出発点でした」
日本橋人形町に谷根千、蔵前、北千住——。近ごろ人気のエリアを例に挙げながら、考察は進む。
「これらの街の共通点は、商店街や横丁、下町の風情、若い店主のいる個人店などがあること。いま住みたい街に求められるのは、“食と住の近接”そして“地元に根付いて暮らす感覚”のようです」