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仲間と楽しみながら作ったものが誰かの役に立っている──認知症マフ作りで広がる輪

ひとり静かにもいいけれど、仲間の存在を近くに感じながら共に手を動かす、それも手芸の醍醐味です。横浜市六浦地域ケアプラザのボランティア部が行なっている、認知症マフ作りの活動をご紹介します。

撮影・太田太朗

みんなで作る楽しさと、誰かに贈る喜びと

お喋りを楽しみながらも精確に縫い進めるベテランの皆さん
お喋りを楽しみながらも精確に縫い進めるベテランの皆さん

横浜市六浦地域ケアプラザ

山と海に囲まれた自然豊かな横浜最南端の町、六浦(むつうら)。その静かな住宅街に立つ横浜市六浦地域ケアプラザの一室は月に一度、“ボランティア部”の弾むような笑い声であふれかえる。

約50名いる部員のうち、この日集まったのは15名ほど。仲良し同士3、4人ずつでテーブルを囲み、談笑していると、リーダーを務めるプラザのスタッフが大きな段ボールを抱えてきた。ドサッと置かれた箱の中から次々と取り出されていくのは、色鮮やかな編み物の数々。まるで子ども用セーターのような可愛らしい見た目のそれらの正体は“認知症マフ”だ。

認知症マフとは、両手を差し込んで温める、筒状の防寒具“マフ”を認知症やせん妄症状のある人のケアへと応用したもの。両手を合わせてお腹の上に置く姿勢と、柔らかく温かい毛糸の触り心地が、患者の不安やそわそわとした気持ちを和らげ、点滴チューブの引き抜きや、おむついじりを自然と防ぐことができるのだという。身体拘束に頼らず、患者の尊厳に寄り添うケア用品として注目を集めている。

完成した認知症マフの山。色も素材も編み柄も違う、手仕事ならではの個性豊かな仕上がり
完成した認知症マフの山。色も素材も編み柄も違う、手仕事ならではの個性豊かな仕上がり
素材となる毛糸は、衛生面への配慮から一度洗濯したものを使用している
素材となる毛糸は、衛生面への配慮から一度洗濯したものを使用している
完成した認知症マフの山。色も素材も編み柄も違う、手仕事ならではの個性豊かな仕上がり
素材となる毛糸は、衛生面への配慮から一度洗濯したものを使用している

今日の作業は、マフの内側にお手玉を縫い付ける、最後の仕上げ。他愛もない雑談に花を咲かせつつも手元の針はスイスイ進み、完成した認知症マフがテーブルの傍らに一つ、また一つと積み上がっていく。

作業の合間を縫って参加のきっかけを尋ねてみると、「もともと手芸が好きだったから」「コロナ禍の気分転換に」「ボケ防止よ(笑)」と、大袈裟な使命感からではなく、趣味の一環として気軽に始めた人が多いよう。

けれども、活動を続ける中で感謝の言葉や、作ったものが実際に使用される場面に触れるにつれ、ボランティアとしてのやりがいも深まっていった。

「私が病気で入院した時に、看護師さんにここのボランティアの話をしたら『作っている方に初めてお会いしました! ありがとうございます』ってお礼を言われて。あ、私たちがやっていることも少しは役に立っているのだと気付いたの。それから張り合いが出てきました」。

認知症マフは患者だけでなく、忙しなく働く看護師たちの心にもホッと一息つくゆとりを生む。そしてそれが患者との会話のきっかけにもなっているのだ。

さらに活動は国境を超えてベトナムの病院へと寄付されたこともある。「現地の映像を見せてもらったんだけど、そしたら子どもたちも興味津々で私たちの作ったものに触りまくっていたのね。あれ見たら頑張ってやりたいって思うわよ」

中にはビーズや綿が入ったお手玉が
中にはビーズや綿が入ったお手玉が
これを触ったり握ったりすることで、より心が落ち着くという
これを触ったり握ったりすることで、より心が落ち着くという
中にはビーズや綿が入ったお手玉が
これを触ったり握ったりすることで、より心が落ち着くという

教え合い、アイデアを重ね、みんなで形にしていく喜び

ボランティア部が作るのは、認知症マフだけではない。病院スタッフ用の肩掛けバッグや近隣の学校の入学祝いポスターなど実に様々。日々、新しいものに挑戦し続けている。

「何か新しいものを作ろうってなった時は、誰が先生っていうことでなくて、お互いに教え合って進めていくの。皆さん長年手芸をやられていてすごくお上手だけど、その中でもそれぞれに得意分野があるんですよ」

「お正月とかひな祭りとかの季節のものだと、締め切りがあるのね。だから間に合いそうにない時は、宿題として持ち帰ることもあるの。これがけっこう手間でね(笑)。でも、家で途中まで作ったものをここに持ってくると、皆さん、私では考えつかないようなアイデアで仕上げていて。チームプレーって感じが楽しいの」

細かな縫い方のコツをレクチャー中。写真右の女性は元・和裁士という経歴の持ち主
細かな縫い方のコツをレクチャー中。写真右の女性は元・和裁士という経歴の持ち主

みんなで寄り集まって何かを作る。そこには、単なる“世間話”以上の楽しさがある。「やっぱり、まず自分たちが楽しまないとね。ボランティアしているっていうよりも、むしろこっちがお世話になっているくらいですよ」と皆、顔を見合わせて朗らかに笑った。

ボランティア部の第1作、活動の原点となったつるし雛。近隣のこどもホスピスへと寄付された
ボランティア部の第1作、活動の原点となったつるし雛。近隣のこどもホスピスへと寄付された
クリスマスのワークショップで使う材料を準備中。初めての挑戦らしいが、難なくこなしていく
クリスマスのワークショップで使う材料を準備中。初めての挑戦らしいが、難なくこなしていく
ボランティア部の第1作、活動の原点となったつるし雛。近隣のこどもホスピスへと寄付された
クリスマスのワークショップで使う材料を準備中。初めての挑戦らしいが、難なくこなしていく

【横浜市六浦地域ケアプラザ】
認知症マフ作りや小中学生向けの学習支援などのボランティアをはじめ、ヨガや手芸、書道といった多様なレクリエーションを通して地域の交流を推進。さらにデイサービスや介護保険の申請など福祉面までサポートし、誰もが安心して過ごせるまちづくりに貢献している。

住所:神奈川県横浜市金沢区六浦5-20-2
TEL:045-349-5141
月~土曜:9時~18時 、日曜・祝日:9時~17時

『クロワッサン』1176号より

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