『はいつくばって』ミランダ・ジュライ 著 岸本佐知子 訳──四十五歳女性の葛藤と更年期と前進
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
映画「君とボクの虹色の世界」が話題を呼び、短篇集『いちばんここに似合う人』や長篇『最初の悪い男』が日本でも評判となったミランダ・ジュライの久々の長篇である。主人公の経歴などは著者と重なる部分もあるものの、本作はフィクションだ。
主人公の一人称で進む本作は、彼女の名前が登場せず、「わたし」と表現されるのみ。ロサンゼルス住む四十五歳の彼女はアーティストで、音楽プロデューサーの夫と暮らしている。
ある時まとまった収入のあったことを機に、「わたし」はニューヨークまでの車での一人旅を計画する。が、いざ出発すると、なぜかさほど離れていない街のモーテルに留まることとなり、部屋をゴージャスに改装したうえ、年下男との恋に溺れる。やがて帰宅した彼女は、すべてを失いかけ、さらには更年期の体の変化に見舞われて……。
物語早々で語られる家庭内の男女格差に関する吐露は、どこの国でも同じなのだなと思わせる。
四十代女性が彼女なりの自由を求める姿に、自分自身のこれまでの葛藤や闘いを振り返らずにはいられなかった。これからも我が道を自分で選ぼう、と、元気をくれた一冊。
『クロワッサン』1176号より
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