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『このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。』 著者 スズキナオさんインタビュー ──「ポンコツ化するのはしょうがないんです」

中年期のガタや正直な心情を描いた書き下ろしエッセイ集。『このロボで、行けるところまで行くしかないのだ。』──本を読んで、会いたくなって。著者のスズキナオさんにインタビュー。

撮影・米玉利朋子

スズキナオさん 1979年、東京生まれ。フリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」などで執筆。『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『家から5分の旅館に泊まる』『捨てた紙、捨てられない紙』など著書多数
スズキナオさん 1979年、東京生まれ。フリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」などで執筆。『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『家から5分の旅館に泊まる』『捨てた紙、捨てられない紙』など著書多数

40代後半。肉体の緩やかな下降を自覚し、さまざまなものへの執着心が去ったあとに訪れる穏やかな日々。そんな時期をスズキナオさんは、〈きっと今、私は自意識を持て余した状態から枯れた状態へと向かう、その中間地点にいるのだと思う。〉と言い表した。

酒場巡りや街歩きのライターとして知られるスズキさんの最新作は、これまでの多くの著書とは違い、連載ではなく1年半ほどかけて執筆された書き下ろしだ。

「同年代の友人と話していても、自分の変化やこれからどう生きるかというテーマに直面する頃なんですよね。今までのようにはお酒も飲めなくなるし、子どもも少しずつ離れていって、もう一回人生に向き合う感じがある。かといってそんなにしたいこともなくて、暇な時間が続く。荒野が広がってる心細いような気持ちを、そのまま吐いてみようと思ったんです」

本書には、友人と囲む酒場の温度感、ふとした瞬間に頭をもたげる世間への「逆張り」、さらには性をめぐる切実な寂しさ……。揺れる中年の複雑な屈折が、実に心地よいテンポで配置されている。

「そう、揺れる中年なんです、結局は。かっこよくありたいとは思うけど、それに収まらない不恰好な自分があって、まっすぐな道を歩けていないような。でも自分という体や心をひとつの器として、経年劣化する『ロボ』をうまく使っていくしかないんですよね。ポンコツ化するのはしょうがないから、あらかじめ諦めるスタンスを持っておくのが、ショックを受けないコツかもしれないですね」

日向ぼっこしてるおじいちゃんみたいになれたらいいな

私たちが通り過ぎてきた(または渦中にいる)中年期の揺らぎと、スズキさんの抱えている寂しさは地続きのようにも見える。しかし、微妙で決定的な性差、いわゆる「おじさんとおばちゃんの違い」にもスズキさんは言及する。

「僕は今大阪に住んでいるんですが、大阪の女性を見ていると、ある年齢から自分から『おばちゃん』っていうキャラを背負って開き直る人が多いんですよね。そしてコミュニケーションを滑らかにする。でもおじさんがそれを真似すると、お節介とか薄気味悪さ、暴力性を持ったりして不審がられてしまう。その難しさでまだ安定したゾーンに行けていない感じです」

スズキさんは自らの痛さや鬱陶しさを自認しているからこそ、無理な若作りも、過剰な枯れアピールもしない。等身大の姿が伝わってくるから、読者には安心感を与え、若い世代や同志にとっては一種の理想像に見えるのだろう。

「そうなんですか(笑)。まあ、できるだけ自分の生々しさとか寂しさとは向き合いながら、たまにぶれて揺れつつも安定した飛行を続けたいですね。みんなにとって脅威じゃない、日向ぼっこしてるおじいちゃんみたいな可愛い存在になれたらいいなと思っています。でも、そこへ至る道のりはまだまだ遠くて険しそうです」

中年期の体のガタや正直な心情を描いた書き下ろしエッセイ集。社会学者・岸政彦氏との特別対談も収録。 幻冬舎 1,650円
中年期の体のガタや正直な心情を描いた書き下ろしエッセイ集。社会学者・岸政彦氏との特別対談も収録。 幻冬舎 1,650円

『クロワッサン』1175号より

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