『誰何(すいか)』伏尾美紀 著──謎を追ううちに浮かび上がる人生
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
昨年刊行の『百年の時効』が大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞し、三冠を達成。大注目の警察小説の書き手の新作である。
これまでの作品はすべて刑事が主人公だったが、本作の二人の主人公のうち、一人は元刑事だ。40代で北海道警を辞め、現在は児童相談所の臨時職員として働く新内だが、なにやら事情がありそう。彼は警視庁の刑事、宝生から、行旅死亡人の年配女性が、自分の警察時代の名刺を持っていたと告げられる。が、新内に心当たりはない。新内は宝生に強いられ、その女性の身元を探ることになる。
同じ頃、道警の刑事、砂本は奇妙なひき逃げ事件の捜査に当たっていた。被害者の自宅を訪れた彼が見つけたのは新内の名刺……。
それぞれの調査&捜査が進むにつれ浮かび上がってくるのは新内、砂本、身元不明の女性、そしてもう一人の女性それぞれの人生模様。特に新内が警察を辞めた理由には愕然とする。
新内が調査のために北海道各地を訪れ、その街の歴史も絡んでくる。後半は1ページ1ページに重厚なドラマが詰まっていて放心する。確かな手応えの一冊。
『クロワッサン』1174号より
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