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情報処理が追い付かない!? 脳疲労によっておこる心身の不調

いつも疲れ気味なのは脳のせい!? 現代の生活で慢性化しやすい脳疲労の正体と解消法を脳神経外科医・奥村歩さんに教わります。

イラストレーション・市村 譲 文・黒澤 彩

情報処理が追い付かない!? 脳疲労によっておこる心身の不調

「最近、疲れているな」と感じることはあっても、「脳が疲れているな」とは思わないのでは? ところが、体も頭も心も、あらゆる疲れとはすなわち、脳疲労なのだという。

「体の疲れと心の不調は別ものと思われるかもしれませんが、脳に起因するという意味では同じです。たとえば、マラソンで長い距離を走ってへとへとに疲れるのは、脳が『これ以上がんばったら危険だよ』というサインを出しているから。脳には、命の危険を知らせる危機管理の役割があるので、脳疲労のサインを見過ごさないことが大切です」と教えてくれたのは、脳を専門とする医師の奥村歩さん。

下のチェックリストにあるような、情報処理能力とコミュニケーション力の低下、体の痛みや倦怠感、気分の落ち込みといった状態は、すべて脳そのものが疲れている証しといえる。

現代人の脳疲労はとても深刻だ。

「脳の前頭葉というところでは日々、情報の出し入れと整理が行われますが、この前頭葉の機能が低下している人が、働き盛りの世代にも増えています。これは情報過多な現代のライフスタイルが引き起こしている問題といえるでしょう。また、更年期前後の女性は自律神経が乱れやすく、常に体調が悪いと感じる人もいるのではないでしょうか。そうした自律神経の働きも脳に由来するので、脳疲労を解消することは更年期の不調にも有効です」

情報処理が追い付かない!? 脳疲労によっておこる心身の不調

Q. 脳疲労って、どんな状態?

情報処理が追い付かない!? 脳疲労によっておこる心身の不調

A. 脳内物質のバランスが崩れて、情報処理が追いつかない状態

体や心にさまざまな症状となって現れる脳疲労。そのとき、脳内で何が起きているのだろう?

「ポイントは、脳内物質のバランスです。脳のパフォーマンスがいいときは、たくさんの脳内物質がうまく切り替わりながら働けています。脳をオーケストラに例えるなら、いくつもの楽器が調和して美しい旋律を奏でているわけですね。それに対して脳が疲労しているときは、どれか一つの物質が過剰に分泌されている状態。ある特定の楽器だけが大きな音を出しすぎて、演奏が不協和音になってしまっているようなものです」

脳内物質は200を超えるといわれるが、なかでも大切な役割を果たしているのが以下に挙げた5つの物質。どれかが過剰になると脳は疲労状態になり、前頭葉の機能が低下し、適切に情報を処理できなくなってしまう。

「これらの脳内物質のバランスを保つためには、指示を出して臨機応変に切り替えをする、指揮者のような役割も欠かせません。それがDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)というものです。最近の研究で、DMNが活性化すると脳内物質のバランスが整う、つまり、疲れにくい脳になるということがわかってきました」

ドーパミン

行動力や生命維持活動の源となる快楽物質。やる気を生み出すために欠かせないが、一方でギャンブルやアルコールなど悪習慣への依存症を引き起こし、脳疲労の元にもなる。

ノルアドレナリン

集中力や実行力を高めてくれる、緊急時に真価を発揮する物質。常に過剰だとイライラしやすく、不足しているとだるさや頭痛につながりやすい。オン・オフの切り替えが重要。

セロトニン

ドーパミンやノルアドレナリンの過剰な分泌を抑え、バランスを調整してくれることから、「精神の安定役」ともいわれる。自律神経の乱れを整えることにも一役買っている。

オレキシン

脳を覚醒状態に保つ物質。働きが弱まると体を休ませ、眠るモードに切り替わる。スマホのブルーライトなどで過剰に分泌。

GABA(ギャバ)

心身をリラックスさせ、眠りに誘う物質。不足するとオレキシンなどの覚醒物質が過剰になり、脳疲労が蓄積されやすくなる。

Q. 慢性的な疲労の原因は?

A. 遺伝子的要因+スマホ、マルチタスク。夏の猛暑も一因

意外な原因の一つに、遺伝的な特性がある。日本人は心を安定させるセロトニンが不足しやすい遺伝子を持つ人の割合が多いうえに、危機管理のために「疲れやすい」「不安を感じやすい」「痛みを感じやすい」といった性質も備えているそう。「ですが、現代ではそれ以上に睡眠負債、スマホ依存、マルチタスクが脳疲労の3大要因といえます。私たちの脳は、昔とは比べられないほどの情報量に晒され続けています。情報過多で、脳の中はゴミ屋敷のようになっていると想像してください」

40〜50代の女性は、家事や仕事に加え、介護など家族のケアも重なって、日常がマルチタスク化する傾向がある。心配事がいくつもあれば、その分、脳は疲労する。

また、暑さや寒さといった環境へ適応するのにもノルアドレナリンを消耗する。猛暑の日には無理をせず、快適に過ごす工夫を。

Q. 放っておくとどうなる?

A. 物忘れや「うっかり」も増える。老後の認知症の確率もアップ

脳疲労が蓄積されていくと、本来の脳の働きに必要なセロトニンやノルアドレナリンといった物質が枯渇してしまう。

「ガソリンがないと車が走れないのと同じで、脳内物質が枯渇した状態では、脳のパフォーマンスは低下します」

仕事でミスをしたり、物忘れが増えるだけではなく、将来的な認知症のリスクも高くなると考えられている。加齢によるものだろうとやり過ごさずに、脳が疲れていると自覚することが大切。漠然と不安を抱いたり、体の痛みが気になったり、会話のときにうまく言葉が出てこないなどの変化は、脳からの疲労のサインと捉えよう。

「過度に気にしすぎる必要はありませんが、脳疲れをこまめに解消して、そもそも疲れにくい脳にすることもできます。次のページで紹介するような解消策を、生活に取り入れてみてください」

  • 奥村歩 さん (おくむら・あゆみ)

    脳神経外科医

    医学博士。おくむらメモリークリニック理事長。これまでに10万人以上の脳を診断。『脳を休めて整える習慣』『スマホ脳の処方箋』など、脳疲労についての著書多数。

『クロワッサン』1173号より

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