『団地のさんにん』藤野千夜 著 北澤平祐 絵──人気小説のスピンオフ。作中人物が描いた絵本
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
ドラマ化されて大好評だった『団地のふたり』と続篇『また団地のふたり』に続くスピンオフ絵本。
前二作は、生まれ育った団地に戻って暮らす50代の女性二人、イラストレーターの奈津子と非常勤講師のノエチの日常を描いていた。二人は保育園の頃からの幼馴染みで、母親が親戚の介護で帰郷中のためひとりで暮らす奈津子の部屋に、ノエチがちょくちょく顔を出している。二人のなんでもないおしゃべりや、ちょっとしたお出かけなど、決して大事件ではない出来事が描かれ、これが永遠に読んでいたくなるくらいの楽しさなのだ。
このスピンオフ絵本は、彼女たちが小学生だった頃のお話。その頃は奈津子とノエチとそらちゃんの三人で仲良くしていた。ある春の日、団地の公園でシートを敷いてお花見を始めると、不思議なことが……。大人気イラストレーター、北澤平祐さんの遊動感あふれる挿絵もめちゃめちゃ可愛い。
『団地のふたり』では、奈津子が幼馴染みのそらちゃんをモデルに、「ソラちゃん」が主人公の絵本を作ろうとしている。つまり本書は奈津子が作った絵本という設定だ。そう気づくと、涙腺が刺激されてしまうのだった。
『クロワッサン』1172号より
広告