『雪の如く 山の如く』張 天翼 著 濱田麻矢 訳──中国の女性たちから高い支持を得た短篇集
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
表記は異なるが読み方はすべて「リーリー」という名の、大学生から高齢者までさまざまな女性を主人公にした短篇集。中国の現代女性が直面している状況を描いて共感を呼び、国内の読書サイト「豆瓣」では2022年国内フィクション部門で第一位を獲得したという。
大学で寮生活を送る立立は、旧正月に養父のもとに帰郷する列車の旅で、20時間以上もかかるのに「座席なし」の切符しか入手できなかった。当日の車内は大混雑で、車掌の青年が親切であることが唯一の救いだったが、思わぬ落とし穴が待ち受けている。
週に何度か仕事帰りに公営のプールに通うことが習慣の瀝瀝は、新たに常連となった美しい女性に好感をおぼえる。ある時、彼女が常連の男性に水中で痴漢されたと激高。自身も彼に同じことをされたおぼえのある瀝瀝は、彼女を援護する。
一人っ子政策など社会的な背景は異なるものの、主人公たちの体験や感情は日本の読者もおぼえがあると思う。それとは別に、日常の光景とそのなかでの機微を丁寧に描く筆致も魅力だ。今後、どんな切り口で中国現代社会を描いていくのか、楽しみになる作家である。
『クロワッサン』1170号より
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